2026.9 SEPTEMBER 74号

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REPORT & NETWORK

女性農業者のさらなる参画・発展に向けて
農林水産省 経営局 就農・女性課 女性活躍推進室 課長補佐 重光 真起子

1 はじめに

 我が国の農業は、少子高齢化や後継者不足により深刻な担い手不足が進んでいます。このような中で、女性は農業の重要な担い手として多岐にわたる農業現場で活躍しています。農林水産省では、1948年の生活改善課の設置以降、生活改善普及、農村婦人の役割向上、農山漁村婦人の地位向上、農村における女性の能力の向上等と変遷しながらも女性農業者向けの施策を実施してきました。そして、国連は女性が農業において果たす重要性に光を当てるため、本年を「女性農業従事者の国際年」(International Year of the Woman Farmer (IYWF 2026))と定めました(国連決議 A/RES/78/279号)。そこで、本レポートでは、我が国における女性農業者を巡る現状や課題を考察した上で、農林水産省女性活躍推進室(以下、当室)が取組む施策を一部紹介しつつ、女性農業者が果たす意義や今後の目指すべき姿について考えます。

2 女性農業者の現状・課題

 国連によると、2019年時点で、世界の女性労働者の36%が農業・食料関連分野に従事しています。特に南アジアでは、女性労働力人口の71%、サハラ以南アフリカでは66%が農業・食料関連分野に従事しており、女性は世界各地で農業・食料関連分野を支える重要な存在となっています(FAO, 2023)。我が国においても、女性は全国各地で農業・食料生産を支えており、その活動は、いわゆる農作業にとどまらず、農産物の加工・直売、インターネットやSNSを活用した販売、商品開発・ブランド化、観光農園や農家レストランの運営など、新たな活動にも積極的に取り組んでいます。さらに、農地の保全や食育活動など、地域農業が抱える課題の解決にも幅広く取り組んでいます。一方で、以下指摘する課題が存在します。

(1)女性農業者人口の減少

 2025年現在、我が国の基幹的農業従事者1のうち、女性は約36.7万人です。しかし、この15年でその数は約60%減少しており、男性の減少率が約40%であることと比べても、女性農業者がより速いペースで減少していることが分かります(農林水産省、2026)。また、基幹的農業従事者に占める女性の割合は約36%ですが、これも過去15年間で7ポイント低下しており、女性農業者の相対的な減少も浮き彫りとなっています(図1)。こうした女性農業者の減少には、地域の少子高齢化や若年女性の都市部への流出など、複合的な要因が影響していると考えられます。一方で、様々な分野で人手不足が深刻化する中、我が国の農業を持続的に支えていくためには、「農業」という職業の魅力を高め、労働環境や働き方を見直し、性別にかかわらず誰もが働きやすく、農業に携わることにやりがいや満足感を得られる産業にしていくことが必要です。

図1 男女別にみた基幹的農業従事者数と構成割合の推移

図1 男女別にみた基幹的農業従事者数と構成割合の推移

資料:農林水産省「農林業センサス」、「2010年世界農林業センサス」 (組替集計) より作成

(2)農業経営における女性参画の不足

 女性は農業現場を支える重要な人材となっていますが、「経営者」という立場にとなると、その存在は極めて限定的です。2024年現在、個人経営体における女性の経営主の割合は6.8%にとどまり、経営主の大半を男性が占めています(農林水産省、2025)。また、男性が経営主であっても、女性が何らかの形で経営方針の決定に関与している個人経営体は23%にとどまり、女性が経営に関与している割合は合わせても3割にも満たない状況です(農林水産省、2025)。さらに、「プロの農業経営者」ともいえる認定農業者2に占める女性の割合も、2025年時点で5.5%にとどまっています(農林水産省、2026-2)。このように、農業現場では、多くの女性が重要な役割を担っている一方で、農業経営の意思決定の場への女性の参画は、未だ十分に進んでいません。

 一方で、個人経営体について、女性が経営に参画している経営体と参画していない経営体の農産物販売金額及び農業生産関連事業売上金額の平均を比較すると、いずれも女性が経営に参画している経営体の方が高いことが示されています(農林水産省、2023)(図2)。また、女性の経営への関与が「増加している」と答えたグループでは、個人・法人といった経営形態に関わらず収益が大きく増加しているほか、女性が経営に参画している経営体は、女性のいない経営体と比べて、売上高増加率、経常利益増加率ともに高い傾向が示されています(日本政策金融公庫 2016)。

図2 女性の経営参画と農産物販売金額・農業生産関連事業売上金額の伸び率(個人経営体)

図2 女性の経営参画と農産物販売金額・農業生産関連事業売上金額の伸び率(個人経営体)

資料:農林水産省「農業における女性活躍に関する特徴把握分析レポート」に基づき作成

注:伸び率は2015年から2020年の比較。農業生産関連事業とは、農産物の加工、小売業、観光農園、貸農園・体験農園等、農家民宿、農家レストラン、海外への輸出、再生可能エネルギー発電等を指す。

 こうした効果の背景には、女性が持つ多様な視点やアイデアが、商品開発やマーケティング、販売等に活かされていることがあると考えられます。このように、女性の経営参画は農業経営にプラスの効果をもたらすことが示されている一方で、現状では、女性の経営参画が限定的です。これは、女性が持つ能力や経験、アイデアを十分に活かせていないだけでなく、優れた人材を活かしきれないことで、農業経営が本来持つ可能性を狭めているということでもあり、ひいては、我が国の農業全体にとっても大きな損失といえます。地域農業・経済を活性化し、農業の持続的な発展につなげるためにも、多彩な能力やアイデアを持つ女性農業者が、その力を十分に発揮できる環境を整え、農業経営における女性の参画と意思決定への関与をさらに高めていくことが不可欠です。

(3)地域農業の意思決定における女性参画の遅れ

 我が国には、農地の適切な利用を推進する「農業委員会」、営農や農業者の生活の向上・改善を支える「農協」、水利施設の維持管理や農地の整備を担う「土地改良区」など、地域農業の在り方や方針を決める上で重要な役割を担う農業組織が存在します。将来にわたり持続可能な地域農業を構築していくためには、こうした組織の意思決定の場に、地域を構成する男女がともに代表し、多様な意見を議論や方針に反映していくことが不可欠です。上記3団体の関係法令3においても、委員や理事の年齢及び性別に著しい偏りが生じないように配慮しなければならないことが規定されています。

 また、男女共同参画社会基本法(1999年法律第78号)により、2025年度末までの男女共同参画社会の形成に向けた基本的方向性等を定めた第5次男女共同参画基本計画(2023年12月閣議決定)では、農業分野も含む女性の参画・登用について、数値による成果目標が設定されました。これに基づき、地域農業組織における女性登用に向けた取組が進められた結果、女性の委員・理事等の割合は徐々にではあるものの着実に増加しています。しかし、成果目標の達成には、なお道半ばの状況です。

 さらに、2026年度から5年間の方向性を示す第6次男女共同参画基本計画(2026年3月閣議決定)では、「2020年代の可能な限り早期に指導的地位に占める女性の割合が30%程度となること」を引き続き目指し、取組を強化する方針が示されています。これを踏まえ、農業分野においても、2030年度までの成果目標として、農協、農業委員会、土地改良区の委員・理事等に占める女性の割合が設定されるとともに、女性が登用されていない組織をゼロにするため、取組を一層推進することが掲げられています(表1)。このほか、農業・食料・農村基本計画(2025年4月閣議決定)においても、女性農業者が地域の方針策定に参画する割合がKPI4として設定されています。現在、女性の参画は着実に進んでいるものの、現状と成果目標との間には依然として大きな隔たりがあります。地域農業の持続的な発展に向けて、女性農業者が地域の方針策定や意思決定の場に参画し、その声を反映できる機会をさらに広げていくことが必要です(表1)。

表1 農業分野における女性登用の成果目標と現状(第6次男女共同参画基本計画)

特徴

成果目標

2030年度

現状

最新値

農業委員に占める女性の割合

女性委員が登用されていない組織数

0

169/1696

(2025年度)

農業委員に占める女性の割合

20%(早期)、

更に30%を目指す

14.8%

(2024年度)

農業協同組合の役員に占める女性の割合

女性役員が登用されていない組織数

0

76/507

2024年度

役員に占める女性の割合

15%(早期)、

更に20%を目指す

11.20%

土地改良区(土地改良区連合を含む)の理事に占める女性の割合

女性理事が登用されていない組織数

0

2878/4035

(2025年度)

理事に占める女性の割合

10%

4.0%

(2025年度)

資料:第6次男女共同参画基本計画に基づき作成

 以上、女性農業者を取り巻く現状や課題について3つの視点から分析し、今後の取り組むべき方向性について考察しました。一方で、「女性農業者」と一括りにしても、農家に嫁いだ女性、後継者、新規就農者、農業法人の経営者、法人に雇用されている就農者など、その立場や働き方は様々です。それぞれが抱える悩みや目標も多様であり、必要とされる支援も異なります。そこで当室では、女性農業者の置かれている状況をステージごとに捉え、それぞれの段階に応じた支援を行うとともに、女性農業者のさらなる参画と発展に向けた取組を総合的に展開しています(図3)。ここでは、当室が進めている取組の一部をステージ別に紹介します。

図3 女性農業者の参画・発展のステージ

図3 女性農業者の参画・発展のステージ

資料:著者作成

3 ステージ別取組・支援について

(1)農業・農村への呼び込み・定着

(ア) 女性が働きやすい環境整備

 職場の良好な労働環境は、性別に関わらず重要ですが、女性が働きやすい職場を整備することは、農業に従事したいと考える女性を増やすことにもつながります。一方、農業現場では、圃場にトイレがない、トイレが男女共同であるといったケースが少なくありません。男女別トイレの設置は、女性が安心して働くための基本的な職場環境の一つです。また、更衣室がない農園は、女性だけでなく男性にとってものプライバシー確保の観点から問題があります。さらに、他産業では事業所に託児スペースを設けるなど、仕事と子育ての両立を支援する取組が進んでいますが、農業現場ではまだ十分に普及していません。こうした職場環境の整備は、被雇用者側だけでなく、雇用する側にとっても重要です。2024年現在、農業経営体における女性の常雇い数は7万3千人で、常雇い全体の46.1%を占めています (農林水産省、2025-2)。女性従業員が安心して働ける環境を整備することは、優秀な人材の確保・定着につながり、ひいては農業経営の安定にも寄与します。実際に、基本的な職場環境が整備されていない農園では、求人が上手くいかず、働き手の確保に苦慮する例もみられます。

 当室では、2021年から女性が働きやすい環境の整備に取り組む農園等を支援しています(女性の就農環境改善 ・活躍推進事業)。本事業では、農業現場における男女別トイレ等の整備を進めるとともに、従業員の仕事と子育ての両立を支援するための雇用環境の整備や、女性の活躍を推進するために策定する一般事業主行動計画5の策定を求めています。これにより、施設や設備といったハード面と働き方や職場のルールといったソフト面の両面から、女性が働きやすい就農環境の整備を一体的に推進しています。一般事業主行動計画には、農園における女性農業者の新規確保の目標人数や職場環境の整備目標等も盛り込まれています。本事業を活用した農業法人等からは、設備に加え、就労ルールを整備することで、女性従業員の職場環境に対する満足度が向上したほか、従業員間のコミュニケーションも活発になったとの報告が寄せられています。「女性が働きやすい農業」は、女性の就農促進であるとともに、農業経営の持続性を高める取組として進めていくことが重要です。

(イ) 女性農業者の裾野を広げる「農業女子プロジェクト」

 女性農業者を増やすためには、まず農業が女性にとって魅力的な職業であり、職業選択の一つであることを認識してもらうことが重要です。そこで当室では、2013年から、女性農業者が企業や教育機関と連携し、自らのアイデアを活かした新たな商品・サービスの開発等に取り組む「農業女子プロジェクト」を推進しています。

 本プロジェクトには、様々な業種の企業が参画しており、これまでに、女性が使いやすい農業機械や作業着の共同開発など、女性の声やアイデアを生かした取組が行われてきました。また、就農を目指す女性の交流会や、全国のメンバーが一同に会して農業について語り合う「大農業女子会」等も開催し、女性農業者同士の交流を深めるとともに。新たな担い手の確保にもつなげています。2013年の発足当初は37名だったメンバーは、2026年8月現在で1,131名まで増加し、地域・世代を超えた大きなネットワークへと成長しています。なお、「農業女子」という名称ですが、参加メンバーに年齢制限はなく、幅広い世代の女性農業者が参加しています。こうした活動や成果を発信することで、いきいきと農業に取り組む女性農業者の姿を広く伝え、農業を職業として選択する女性を増やすことを目指しています。

(2)経営参画・発展

(ア) 地域農業を牽引する女性リーダーの育成

 経営に関する知識や経験を有することは、女性農業者自身の経営能力の向上に資するだけでなく、地域農業の振興にもつながるとともに、地域農業における意思決定の場への女性の参画を促進する上でも重要です。そのため、女性農業者が経営について学ぶ機会を確保するとともに、同じ志を持つ仲間とのネットワークを形成することが重要となります。一方、地域によっては、女性農業者同士のネットワークが十分に形成されておらず、経営に関する情報や学習機会へのアクセスについて、依然として男女間で格差が生じている状況もみられます。こうした課題を踏まえ、当室では、2014年度から「女性農業次世代リーダー育成塾」を実施し、2024年度からは「女性農業者のための事業推進力&チームマネジメント力アップ研修」として、幅広い視野と高い経営力を備え、地域農業を牽引するリーダーとなる女性農業者の育成に取り組んでいます。

 2026年度は、北海道から沖縄県まで全国各地から31名の女性農業者を選抜し、約8か月にわたり、座学、実地研修、模擬商談、個別コーチング等を通じて、実践的な経営力及びリーダーシップを体系的に学ぶ機会を提供しています。

 また、2025年度は、研修の最終回において、研修で得た知識や気づきを踏まえ、今後の目標及びその達成に向けたアクションプランの発表を行いました。さらに、新たな取組として、研修での学びを地域に還元し、地域における具体的な取組につなげていくためには、研修生自身の目標や思いを自治体や地域の農業関係者と共有することが重要であるとの考えから、地域における今後の取組目標等について、自治体や地域農業関係者に対して発表する機会も設けました。

 これまでの研修生からは、行動力やコミュニケーション能力、経営に対する意識が向上したとの声に加え、地域の農業関係者とのつながりが深まったとの評価が寄せられています。また、研修受講を契機として、経営における役職への就任や、農業委員、農業協同組合の理事等への登用につながる事例も生まれています。このように、本研修は、女性農業者の経営能力及びリーダーシップの向上を図るとともに、地域における女性農業者のネットワーク形成や意思決定の場への参画を促進し、地域農業を牽引する女性リーダーの輩出につながる重要な人材育成の取組となっています(図4)。

図4 2025年度女性農業者のための事業推進力&チームマネジメント力アップ研修

図4 2025年度女性農業者のための事業推進力&チームマネジメント力アップ研修

(イ)女性農業者の広域的なネットワーク形成の促進

 結婚を機に他地域から移住する女性農業者は、地域とのつながりを築く機会が限られ、孤立しやすい場合があります。また、日常の農業活動の範囲を超えた交流やネットワークの形成は、女性農業者の能力向上や情報交換、取組の活性化を図る上で重要です。

 こうした課題を踏まえ、2025年度には、県域を越えた広域セミナー「九州農業女子スクールinかごしま」及び「中国四国農業女子アグマネ・ラボin岡山」を初開催しました。

 参加者からは、県域を越えた女性農業者同士の新たなつながりが生まれ、情報交換やネットワーク形成を促進する貴重な機会となったとの評価が寄せられています。今後も、こうした広域的な交流の機会を通じて、女性農業者の能力向上とネットワーク形成を促進し、地域における女性農業者の活躍の場の拡大につなげていきます。

(3)地域の方針策定への参画

(ア)固定的な性別役割分担意識の解消に向けた啓発

 当室では、地方農政局等と連携し、全国の自治体や関係団体に対し、制度・仕組みづくりに関する資料や優良事例集等を提供するとともに、女性の参画・登用を促進しています。一方、女性農業者からは、「家事負担が女性に偏っているため地域の役職を引き受けることが難しい」、「男性が組織の主要な役割を担うべきとの意識が地域に根強くある」といった声が寄せられています。このような家庭や地域における固定的な性別役割分担意識や男性中心の慣習等が、女性農業者の参画・登用を進める上での大きな課題となっています。

 こうした意識や慣習を変えていくためには、まず、一人一人が自らの中にある固定的な性別役割分担意識に気付き、仕事の役割や地域活動への関わり方を性別によって決めつけない意識を持つことが重要です。

 このため、当室では、固定的な性別役割分担意識への気付きを促し、その解消につなげるため、「性別に基づく一方的な思い込み~地域における役割・分担の再点検~」と題した啓発映像を作成しました(2024年度農林水産省女性が変える未来の農業推進事業)。映像では、実際に農業に従事する方々の声を基に事例をドラマ形式で紹介し、性別に基づく固定的な思い込みが農業や地域活動に及ぼす影響と、その解決に向けた考え方を示しています。

 また、女性理事の登用を組織トップが先導し、組織全体で積極的に推進した農業協同組合の取組を紹介する動画や、女性農業委員の活動及びそれを支える周囲の関係者へのインタビュー動画も作成し、女性の参画・登用の促進に向けた啓発を行っています。

(動画の視聴:https://myfarm.co.jp/women/empowerment)

(イ)地域農業のリーダー層の意識改革による女性の参画・登用の促進

 地域農業における女性の参画・登用を進めるためには、女性自身の挑戦だけではなく、農業委員、農業協同組合の理事、土地改良区の理事等、地域農業組織のトップが女性登用の意義を理解し、率先して取組を進めることが不可欠です。

 このため、当室では初の取組として、2025年度に「変革の時代を生き抜く地域農業の在り方─女性登用の意義─」をテーマに、「農業リーダーズサミット2025」を開催しました。当日は、全国各地から農業委員会会長、農業協同組合の理事、土地改良区理事長等、地域農業の方針決定に携わる約350名のリーダーが参加しました。

 サミットでは、鳥取県知事及び総務大臣を務めた片山善博氏を迎え、県における女性の参画を進めた経験を踏まえた、女性登用に向けた組織中枢の意識改革やリーダーシップの重要性について基調講演を行いました。また、全国農業会議所、JA全中、全国土地改良事業団体連合会等の農業関係団体の上層部から、各組織の女性登用に関する目標や今後の取組方針が表明されました。さらに、女性人材育成の専門家から、データや事例を交えながら、女性登用を阻む課題とその克服に向けた具体的な方策について解説が行われました。

 参加者からは、「女性登用の重要性を改めて認識した」などの声が寄せられ、地域農業のリーダー層における意識醸成を図る機会となりました。2026年度も本サミットを開催し、地域農業の意思決定を担うリーダー層の理解を深め、女性の参画・登用に向けた組織的な取組を一層促進していきます(図5)。

図5 農業リーダーズサミット2025 変革の時代を生き抜く地域農業の在り方 ─女性登用の意義─

図5 農業リーダーズサミット2025 変革の時代を生き抜く地域農業の在り方 ─女性登用の意義─

4 女性農業者が活躍できる農業・農村の実現に向けて

 女性農業者による起業、経営発展、地域活動など、全国各地で多様な取組が展開され、多くの女性農業者が活躍しています。当室では、こうした女性農業者の取組を支援するとともに、その挑戦や活躍を広く社会に発信するため、農山漁村女性活躍表彰や農業女子プロジェクト等を通じて、女性農業者の「見える化」に取り組んでいます。

 一方、本レポートでは、女性農業者の多様な活躍に光を当てるだけでなく、その活躍を阻む構造的な課題についても、3つの視点から整理・指摘しました。我が国の農業では、少子高齢化や後継者不足等を背景に担い手の減少が進んでおり、女性農業者の減少も深刻な課題です。今後、農業の担い手がさらに減少する中、家事・育児・介護の負担が女性に偏ったままであれば、女性農業者の負担は一層増大することが懸念されます。また、農業分野における男女間の格差は依然として存在しています。女性の経営参画が農業経営の発展や収益性の向上につながる可能性があるにもかかわらず、経営者や地域のリーダー層の多くを男性が占めているのが現状です。さらに、地域農業の政策・方針決定の場への女性の参画も十分に進んでおらず、地域農業の運営に女性の意見が反映される機会は限定されています。実際、農業分野は、他分野と比較しても、女性の地域方針と意思決定への参画が十分に進んでいない状況にあります。実際に地域の現場に行くと、「能力のある女性がいない」、「女性は経験が足りない」といった声が聞かれることもあります。こうした現状を踏まえると、女性農業者が地域や組織において一歩前に踏み出し、その能力を十分に発揮するためには、今なお相応の覚悟や努力が求められていると言わざるを得ません。

 2026年は、第6次男女共同参画基本計画の計画期間の初年度であるとともに、女性農業従事者の国際年という女性農業者の一層の活躍と参画を推進する重要な年です。農業は、経営や働き方における自己裁量の余地が比較的大きく、家族や生活の場とも比較的近いことから、女性が能力を発揮しながら家庭生活や地域活動と両立しやすく、本来、女性農業者の参画・発展に非常に親和性のある、大きな可能性を有した産業です。

 女性がその能力を十分に発揮できる農業、そして女性が暮らしやすく活躍できる農村を実現することは、女性農業者のためだけの取組ではなく、農業・農村の持続的な発展にとっても重要な課題です。

 今こそ、女性農業者自身を含む農業・農村の関係者が、女性の参画・活躍を進める意義を共有し、取組を一層推進していく必要があります。そのためには、女性農業者自身の挑戦に加え、家族の理解や地域・組織のトップによる後押しが不可欠です。当室では、こうした現状と課題に正面から向き合い、女性農業者がそれぞれの能力や意欲を十分に発揮し、さらに飛躍できる環境の実現に向けて、必要な施策の立案・推進に取り組んでまいります。今回紹介した取組にとどまらず、自治体、関係団体、専門家等と連携し、現場の声を踏まえながら、創意工夫を重ね、女性農業者の参画・発展を推進するための総合的な施策を着実に進めてまいります。


1 15歳以上の世帯員のうち、ふだん仕事として主に自営農業に従事している者

2 認定農業者とは、意欲ある農業者を地域農業の担い手として明確化し、農業者が経営改善計画に沿って規模拡大、経営改善に取り組む者

3 農業委員会等に関する法律(1951年法律第88号)、農業協同組合法(1947年法律第132号)、土地改良法(1949年法律第195号)

4 Key Performance Indicator(重要業績評価指標)

5 女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(2015年法律第64号)や次世代育成支援対策推進法(2003年法律第120号)に基づく

[参考資料]

FAO 2023 「The status of women in agrifood systems」

日本政策金融公庫 2016、「雇用状況等の動向に関する調査」
https://www.jfc.go.jp/n/release/pdf/topics_160915a.pdf

農林水産省 2023「農業における女性活躍に関する特徴把握分析レポート」 (2023年12月)

農林水産省 2025「2024年農業構造動態調査」

農林水産省 2025-2「2024年度 食料・農業・農村白書」

農林水産省 2026「2025年農林業センサス」

農林水産省 2026-2「農業経営改善計画の営農類型別等の認定状況(2025年3月末現在)」


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