「限界」を超えて
 ─産業と地域、経済と文化。見きわめて次へ─
京都大学 大学院地球環境学堂 教授 渡邉紹裕

はじめに

 我が国の農業や農村の「危機的な事態」が訴えられるようになって、かなりの年月が経つ。筆者が大学生であった1970年代後半でも、すでに農家の兼業化など農業の産業構造全体における位置の相対的な低下や、農村の混住化など農村社会の構造的な変化のもたらす深刻な事態が懸念されていた。それに対して、おおかた進んでいた地域的な灌漑排水の整備をふまえて、圃場(ほじょう)や集落の整備が進められてきた。

 しかし、均質な小規模農家による米作を中心とする農業と、その農家が構成する農村は、コメの消費量の減少や国際市場の展開を含めた経済情勢の変化の波をまともに受け続け、農家の後継者の育成は進まず、生産に携わる農家の減少と高齢化は本当に進んでしまった。
 この大きな「時代の流れ」を制御するは容易でない。一方、この状況に対して、農業生産の効率化・省力化や農村の生活環境の改善に向けて、さまざまな整備事業が精緻に計画されて、農業や農村における環境保全、多面的な機能の発揮を取りこみながら、広範に展開されてきた。これらは、必要な「対症」ではあったものの、今の状況をみれば、「病気」を根治するようなものではなかった。

 筆者は、この15年近く主に海外の農村を対象とした調査研究を進めてきて、恥ずかしながら国内の状況に疎い事態となっていたが、最近、国内の農業や農村の実状に接する機会が増えてきた。そこで、改めて、最近の状況を筆者なりに見直して、基本的な課題を整理してみたい。また「課題の整理」でとどまるのかと躊躇(ちゅうちょ)しながらも、やはり欠かせないプロセスであり、読者各位の議論の材料となればと考える。

1.日本の農業・農村の現状

 全国で、農家の減少や高齢化は急速に進み、農水省資料によれば、今や驚くような数字が並ぶ。「15歳以上の農家世帯員のうち、調査期日前1年間に農業のみに従事した者または農業と兼業の双方に従事したが、農業の従事日数の方が多い者」、すなわち「仕事としては農業が主である者」である「農業就業人口」は、平成25年では239万人となっている。平成20年には299万人であったので、5年間で60万人も減少している。そのうち、「ふだんの主な状態が『仕事が主』」の者が「基幹的農業従事者」になるが、その数は平成25年で174万人、平成20年からは23万人も減少し、過去約15年間で約80万人も減少している。その平均年齢は66.5歳であるが、いわゆる「昭和一桁世代」が約3割を占めている。

 農村の人口減少や非農家の増加も、歯止めはかからない。総人口に占める農村人口の割合は過去40年間で15%も減少、約3割にまで低下した。農村集落の混住化率(非農家の割合)は、昭和35年でも39%もあったが、約50年間で約50%(ポイント)も増加して、平成22年では91%と「農村に住む人の9割が非農家」という、「常識外」の事態となっている。平地農業地域でも約8割となっている。

 こうしたなか、平成22年では総農家253万戸に対して、「土地持ち非農家」(農家以外で耕地および耕作放棄地を5a以上所有する世帯)が137万戸にまで増加している。耕作放棄地は、同年で約40万haに及んでいるが、そのうち土地持ち非農家が所有するものが約18万haと半分近い。

 一方、農地の所有者や耕作者の変更など農地流動化は着実に進展している。農地面積のうち、「担い手」が利用する面積は着実に増加し、平成22年で農地面積459万haの49%、226万haにまで増加している。なお、「担い手の利用面積」とは、認定農業者(特定農業法人含む)、市町村基本構想の水準到達者、特定農業団体(平成15年度から)、集落営農を一括管理・運営している集落営農(平成17年度から)を「担い手」とし、それらが所有権・利用権・作業委託(基幹3作業─耕起・代かき、田植え、収穫)により経営する面積を指す。このうちでも、法人経営体の増加は著しく、大規模化する傾向がはっきりとしている。

 農家の減少と高齢化や非農家の増加は、もはや「限界的状況」であるが、その傾向は今後も続くであろう。また一方で、農地の流動化の拡大も継続するであろう。農家数については、先の「昭和一桁世代」の農業からの撤退は、大きな変化をもたらすと予想される。
 これに対して、農地集積によって「担い手」に営農活動が委ねられることは、食料生産の確保と農業生産性の向上・市場競争力強化の観点から支援する施策が継続・拡大することが予想され、その趨勢(すうせい)が大きくそがれることはないであろう。

 このように考えると、農水省など国が描くように、また誘導しようとするように、農家は限られた数の「担い手」となる農家や農業法人などの組織と、多くの「土地持ち非農家」への二極化がさらに進むと思われる。また、農村における人口の減少や高齢化、農業従事者の減少は、農業を中心に機能していた農業集落の脆弱(ぜいじゃく)化をいっそう進めるものとなろう。(以上、統計などの数値は農水省審議会資料、2014による。)

2.国による「新たな農業・農村政策」

 農業と農村の「深刻な」状況をふまえ、国は首相官邸を中心とする農林水産業・地域の活力創造本部によって、平成25年12月に「農林水産業・地域の活力創造プラン」をとりまとめ、農業を「足腰の強い産業」としていくための政策(産業政策)と、農業と農村の有する多面的機能の維持・発揮を図るための政策(地域政策)を「車の両輪」として推進することになっている。

 農林水産省は、具体的に「新たな農業・農村政策」として、以下の4項目を「4つの改革」として打ち出した。すなわち、(1)農地中間管理機構の創設/(2)経営所得安定対策の見直し/(3)水田フル活用と米政策の見直し/(4)日本型直接支払制度の創設、である。それぞれについての農水省による解説(農林水産省パンフレット「新たな農業・農村政策が始まります!!」、2013)を、改めて要約すると次のようになる。

 まず、産業政策として、農地を継続して有効に利用し、効率的な農業経営を展開しようとする担い手に、農地の利用をさらに集積し、また集約化を急ぎ進める必要がある。このため、「農地中間管理機構」が制度化されたが、それが各地において十分に活用されるようなさまざまな対策を講じるとされている。

 次に、一律支払いなど構造改革に適さない面があった従来の経営所得安定対策(旧・戸別所得補償)を改めることにし、米の直接支払交付金や米価変動補填交付金は、段階的に廃止する。一方で、米・畑作物の収入減少影響緩和対策(いわゆる「ナラシ対策」)と畑作物の直接支払交付金(いわゆる「ゲタ対策」)は、一律に被(かぶ)せられた規模の要件を外して、意欲ある農業者が参加できる形にすることとしている。

 また、米の直接支払交付金を見直すことで、主食用の米に偏重することから離れ、麦や大豆、飼料用米など需要のある作物の生産を振興して、意欲ある農業者の判断で作物が選択される状況の実現が目指される。このため、生産調整を含む米政策は様相を変えて、需要に応じた主食用米生産が行われる環境の整備が図られる。行政による生産数量の目標配分は役目を終了する。

 さらに、農業・農村の持つ多面的機能を継続して整備・発現させるべく、地域政策として日本型直接支払(多面的機能支払)を創設する。それにより、集落などによる共同管理等を維持しながら、農地の機能が永続的に維持されて、多面的機能も十分に発揮されることを目指す。これは、規模拡大に取り組む担い手の負担を軽減することにもなり、構造改革の条件を整えることにもなるというものである。

 国は、この「4つの改革」を進め、明確な構想や斬新な発想を持つ担い手や農業経営者が、新たな取組みに制約なく挑戦できる環境を整備することを強調している。また、合わせて、「地域一体」にも触れて、農業・農村の多面的機能の維持・発揮も重要であるとしている。これらが、本当に食料自給率の向上や食料の安全保障に繋(つな)がり、いわゆる「強い農林水産業」を創ることになるのかは、注視されるところである。ただし、国の施策の方向や効果を見きわめるのは当然としても、前提としている前述の事態は厳然として存在し、何らかの施策の転換や事業の実施が必要であることに、もはや疑いの余地はない状況となっている。

 なお、ここまで敢えて触れてこなかったが、農業や農村における今後の展開の基盤については、前述の状況とは別に、水利施設を中心にして、施設の老朽化への対応と、地球温暖化に伴う気候変動と災害リスクの増加への対応も、合わせて喫緊(きっきん)の課題となっている。

3.大きな流れ

 ここまで整理した状況や、そこでの新たな動き、さらに国の施策を眺めると、今、農業・農村は「文化の転換」に直面し掛かっているとさえ感じられる(渡邉紹裕、2014a)。

  農村は、美しい野山に囲まれ、きれいな水が流れ、さまざまな動植物が棲家とする、自然にあふれた美しい空間との認識は、今でも一般的ではないか。一方で、都会は、時代の先端をゆく洗練された人工物で賑わう自由な空間という認識も通常のように思う。その意味で、「農村は自然、都市は文化」と理解するのは、普通のことのようにみえる。しかし、単純にそう理解するのは、実は当たり前のことではないようである。

 農村は、普通は精確な予測が困難な天候や河川などの水の変化のなかで、食料の生産を最大化・安定化させるために、人間の努力や対応が欠かせない。利用可能な地域の、また自己の資源を最大に活用すべく、精緻に気を配り、労力を限界近くにまで投下する生活を長く営んできた。ときには禁欲的な対応も伴うものであった。また、周囲の人々とは、資源の利用や管理のルールを定め、慣習として定着させるなどしてきた。そこは、人間と「自然」との関わり方と、人間同士の関係が、根幹に置かれているという意味で、純粋な「自然」ではなく、人間の営みを中心とする「不自然」な「文化」の空間と認識できる。一方、農村における食料生産量の増大と安定を背景にして、この農村の「不自然」な「抑圧」から解放されて、本来の人間の精神を自由奔放に発しようとする願いが、同調を求める圧力の弱い「自然」な都市を造りだしたと考えられる。つまり、「文化の農村、自然な都市」という認識である。

 しかし、昨今の農村や都市は、この認識に新たな疑問を呈する事態に至ってないか。少なくも、その気配が感じられないか。都市では「不自然」が蔓延し始めているように思える。限界近くと思えるほどに成熟した大量生産・大量消費システムのなかで、環境への負荷の削減は基本要件となり、皆が守るべき環境への影響に対する配慮や規則で、行動はさまざまな強い制約を受けるようになっている。また、深化した情報システムのなかで、自らの位置や状況は常に他者にさらされ、逆に大量の他者情報が届き、関係を整理することを余儀なくされる。自己責任の成果と発信をいつも迫られながらも、他者からは目立たぬように周囲の「空気」を瞬時に読み取る緊張を絶えず強いられる。他者への同調圧力は高く、制約や我慢のストレスが強まっているように感じられる。そして、人間の環境との緊張した関係と、人間同士の関係が根幹に置かれることから、都市の「自然」は失われ、「文化」が拡がっているようである。それに対して農村では、もちろん自然の制約を強く受けることに変わりはないが、農業生産においては、周辺との関係にこだわらない「自由な」活動が、さまざまな形で一気に拡大していくようである。政府の目指す「強い農林水産業」や「美しく活力ある農山漁村」の中心をなす動きが、進みだしているようにみえる。先に記したように、新たな担い手農家への農地集積や規模拡大はどんどん進展し、斬新な、またさまざまな形態のいわゆる「6次産業農家」は各地で続々と登場してきているようである。市場や政策の勢いにも押されて、これまでの規則や制度の枠を揺るがす勢いで、「挑戦有理」といった感じとなっている。農村は、人間の個別の意図の発現において「自然な」空間へと変貌しつつあり、「文化の都市、自然な農村」という、言葉の意味は異なるものの、従来の一般的な表現へ帰着しつつある感がある。

 農業や農村の新たな展開に対しては、これまでの均質な小規模農家とその共同を前提とする仕組みは、その基盤とはなりえず、むしろ制約として機能することが多い。したがって、新たな展開を促進しようとするならば、規制の緩和や廃棄や、関連する法律の改定までが現実的な課題となるのである。しかし、新たな展開を抑制するように働くと思われるこれまでの前提や、規範や規則・制度などは、農業生産を支えてきただけではなく、同時に農村の基本構造でもあり、地域の社会や文化、さらに国土を保全・継承することの根幹にあった。したがって、新たな展開の効率的進展のために現在の「制約」を取り除こうとするならば、継承してきた仕組みや共同が果たしてきた役割や意義を、敬意をもって見直し、必要な措置を取るべきであろう。


4.産業政策と地域政策

 農業と農村における収益性の向上や競争力の強化を推進するための政策を、政府は「産業政策」と称し、担い手の育成や強化を進めようとしている。これに対して、上述のように、地域社会を同時にケアする必要性から、地域の安全や活性化を目的とする政策を「地域政策」と称して、地域コミュニティの維持・強化も目指している。両政策は、これまでも継続的に実施されてきたが、政府は、改めて「車の両輪」と称して、両者のバランスを取った実施を掲げている。

 この産業政策と地域政策は、平地と中山間地では、その目標とする対象や内容は異なることになる。産業政策で目指す担い手の育成や強化は、平地では、コスト削減を主眼にして、経営規模を拡大し、販売も拡大することが基本的な内容となろう。一方で、中山間地では、特徴のある営農を目指して、集落営農などの地域ぐるみの体制を整えて、雇用を創出することが求められよう。

 地域政策は、平地では、担い手へ農地や営農を集中させることへの対応が必要で、従来の集落が果たしてきた長期的、また日常的な役割をどのように継承していくかがポイントとなる。中山間地では、農家の減少や過疎化が進むなかで、集落の機能をいかに維持し、生産条件を底上げするかが課題となる。
 産業政策・地域政策、平地・中山間の組み合わせから、4つのカテゴリーが生まれるが、政策の方向性と内容、対象地域の条件と将来のあるべき姿を考慮した展開が求められる。そこでは、単純に4つのマトリクスに峻別(しゅんべつ)するのではなく、重ね合わせたり、重みを調整したりする、きめ細かな対応も必要となる。

 従来であれば、地域のまとまったコミュニティによって、産業政策を地域政策としても受け止めて活用することが、またその逆も、一般的にみられたと思われる。この巧みな逞しい地域社会の機能を前提とする限り、両施策の峻別の意識は小さくなり、対象も厳しく限定する必要は大きくなかったように思える。しかし、現時点では、両政策は「車の両輪」のように、別個に作動させるものと認識されている。いずれにせよ、この施策の意図と内容、対象や効果を、明確に認識して進めることが、とくに求められるのはいうまでもない。


5.海外での農業農村整備事業における産業政策・地域政策─エジプトの灌漑改善事業から

 ここまで、日本の現在の農業と農村の状況と、それに対する政策を整理した。振り返って、海外における農業・農村の整備事業を考えると、改めてその対象や目的、手法の明確化が重要であることに気づく。すなわち、農業生産の効率化・安定化という「経済性」を追求する「産業政策」なのか、農村地域の社会の保全や活性化という「社会性」を追求する「地域政策」なのか、という認識の評価の軸である。

 海外でも、地域の自然、社会経済、歴史などの条件によって、両政策を一体化した内容の施策となることも少なくないと思われる。また、両政策を、交互に、また段階的に実施することもあろう。いずれにせよ、その主眼の認識を明確にした実施と評価が求められる。
 とくに、地域政策による農村の社会構造の変革は、文化の改変、ひいては国の基本構造に関わることにもなる。これは、現在の日本の状況から、直ちに改めて想起する重要なポイントである。

 その例として、筆者が調査研究を進めている、エジプト・ナイルデルタでの灌漑改善事業の意義と効果を、参考までに紹介することにする(渡邉紹裕、2014b)。エジプトは、国土のほとんどで農業上有効な降雨は全く見こめず、水資源は大陸中央部から流れ来るナイル川に依存している。2010年時点で、ナイル川に依存する水資源水量は年間555億m3で、他の補助的水源(地下水、排水再利用など)を加えて、利用可能な量は年間約678億m3である。これに対して、需要は、供給可能量の全てを使い切る構造となっていて、予測される人口増加や食料需要増加、経済成長をふまえ、農業における節水は国家的な課題である。新規開発農地や多用途での需要に振り向けるために、既存の灌漑地区での灌漑効率の向上による節水の実現に、現行の灌漑システムからの安定水供給を求める農家などの理解・合意が、どのように得られるかが課題である。政府はさまざまな取組みを進め、1990年代に始まった「灌漑改善事業」や、その後継の類似事業群を、国際協力機構(JICA)や世界銀行、米国国際開発庁(USAID)などの支援を受けて実施してきた(WATANABE, T. 他、2013)。JICAは、2000年度からの「ナイルデルタ水管理改善プロジェクト」をふまえ、2012年度から「水管理移管強化プロジェクト」を開始した(独立行政法人国際協力機構、2013a及び2013b)。

 この地域の灌漑は、支線水路までを国が直轄で管理し、その流況に受動的に支配される3次水路(「メスカ」と呼ばれる)から、農家がポンプ(従来は畜力水車)で揚水して配水するのが基本であった。灌漑改善事業は、従来のシステムの施設と管理組織の構造を改変するもので、配水の安定化と均等化によって生産性を向上させ、水利コストをも減少させて、結果として送水量を節減して、節水を実現することが主な目的である。

 従来、農家は輪番で用水が供給される3次水路に畜力による揚水車を設け、それを共同利用して圃場小用水路に配水していた。この30年間での小型動力ポンプの急速な普及にしたがって、分散していた揚水点を統合して揚水機場を設け、その受益範囲などで設立した利水者組合が末端水管理を担うシステムが導入されている。支線水路は、従来の輪番送水から連続送水に移行し、3次水路レベルの利水者組合を連合する支線レベルの管理組合を設けて、国から移管することが目指されている。

 ここで、「地域政策」的な施策の結果として注目されるのは、3次水路レベルの利水者組合で、新たに同じ組織の構成員となった他の農家との協働が、比較的円滑に形成されて機能するための条件である。また、国が管理してきた支線水路レベルで、利水者組合の連合組織が構築できる条件や制約である。さらにその機能によって、水管理や農業生産の実際の改善という「産業政策」としての効果も、検討されるべきである。

 エジプトでの問題は、同国や発展途上国に限ったものではなく、日本でも、地域レベル、とくに灌漑地区の水管理において、直面する課題ではないか。土地改良区などの地区レベルの水管理組織と、集落レベルの水利組合などの階層的な管理組織における役割分担と、情報の形成と共有の方法の再整理の課題である。基盤整備などが「産業政策」の範囲を超えて、国の成り立ちにも関わる人と人の繋(つな)がりといったコミュニティの根幹、すなわち農村の文化に大きく影響するようになることへの、配慮が欠かせないのである。


おわりに

 以上、日本の農業と農村の「限界的な状況」をふまえ、新たな展開を目指す取組みや施策を整理し、取るべき産業政策と地域政策の見きわめとバランスの重要性を論じた。とくに限界的な状況に際して、当面の短期的な経済性を追求する場合に、地域の社会性や文化という国の根幹に関わる部分に対して、永続的に機能する仕組みを仕立て直すことの重要性を述べた。その仕立て直しの過程は、地域における新たな「知」〜水土の知〜の再構築と位置付けられるものとなろう。そして、この姿勢は、海外において農家の減少や高齢化がないところでも、同様に保つべきものであろう。


<編集コメント>
エジプトの水利組合に関しては、本誌第43号「エジプトにおける稲作をめぐる議論と水利組合強化に対する取組み」に紹介されています。

<参考文献>
1)独立行政法人国際協力機構(2013a)国際水管理移管強化プロジェクト
2)独立行政法人国際協力機構(2013b)エジプトの灌漑用水路システムと水利組合
3)農林水産省食料・農業・農村政策審議会農業農村整備部会資料(2014)今後の農村社会の変化等を踏まえた農業農村整備の課題について
4)農林水産省パンフレット(2013)「新たな農業・農村政策が始まります!!」
5)農林水産省(2012)土地改良長期計画
6)WATANABE T., W. H. ABOU EL HASSAN and N. Z. ABOU EL FOTOUH(2013) Development of Policy and Design of the Irrigation Improvement Projects of Egypt, proceeding of the First Irrigation Forum, International Committee of Irrigation and Drainage
7)渡邉紹裕(2014a) 「自然」は都市から農村へ〜農村文化の大転換を見極める.AFCフォーラム2014・2 巻頭言.p.2
8)渡邉紹裕(2014b) 農業用水管理における地域レベルの『共同』の見直し−持続的な水管理の仕立て直しに向けて.水資源・環境学会 26(2),pp.38-41

前のページに戻る