―JIIDから―
東南アジアの発展途上国におけるハザードマップの作成

1. はじめに
  2 0 0 8 年より、農林水産省農村振興局の支援を受け、東南アジアの農村における洪水などの災害に対する対応能力の向上を目的とした「海外農業農村開発地球温暖化対策検討調査事業(農村防災体制強化対策調査)」を実施しています。
  本事業では、ラオスのナムグム川流域の農村とインドネシアのソロ川流域の農村を対象地域としています。これら調査対象地域において、本事業の活動の一部としてArc View を用いたハザードマップの作成を行っていますので、紹介します。

2. ハザードマップ作成の手順
  本調査では、以下のフローに従ってハザードマップの作成を行っています(下図参照)。

図

〔1〕 ハザードマップの範囲を決定するため、
対象地域における過去最大級の洪水の到達域や頻度などについて、聞取り調査を実施した。
〔2〕 対象地域の地形図が整備されていない場合は、ハザードマップの基図として地形図を作成。ラオスの場合は、IKONOSO などの衛星画像をもとに2万5千分の1 の地形図を作成した。インドネシアの場合は、既存の2万5千分の1の地形図を活用した。
〔3〕 J.ERSおよびALOSなどのレーダ衛星の画像を用いて、湛水域の抽出を行い、〔2〕で作成した地形図上に重ねて表示。なお、本方法では洪水被害を受けていない水田や水面の上に建物などの障害物がある場合は、正しく湛水域を捕捉できないので、確認のための現地調査が必要となる。また、日本のハザードマップでは湛水深が表示されるのが一般的であるが、本法では省略した。
  以上が、これまでの活動内容で、今後は、以下の活動を進めていく予定です。
〔4〕現地調査により、湛水領域の確認を行うとともに、被災住民の避難場所の位置、避難ルート、その他樋門などの水利施設の位置を調査し、地図上に記載。ワークショップを通じて、住民や政府関係者などから追加の情報を入手し、ハザードマップに反映させるとともに、ハザードマップの認知や活用法への理解を高める。
〔5〕 政府関係者に対し、現地調査の方法、基図および湛水図の作成法や編集法の研修を実施し、ハザードマップの更新や新たな対象地域でのハザードマップの作成が可能となる体制を整備する。

3. 今後の課題
  現時点で、以下の2つの課題が明らかになっています。このため、今後の活動において、これらの課題に対応していく予定です。
〔1〕 途上国の農民は地形図を見ることに慣れていないため、ハザードマップの基図として用いる地形図は、できるだけ簡単な表現にするなど、工夫が必要なこと。
〔2〕 本手法では地形図と湛水図の作成に、衛星画像を用いており、画像の購入や解析に多額の費用が必要なこと。近年、安価な画像が提供されるようになっており、それらの活用も検討する。

主任研究員 小林慶一郎

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