ザンビア 撮影:其田益成/提供:JICA
(ザンビア 撮影:其田益成/提供:JICA)

編集後記

「経済学の原点はアダム・スミスの『国富論』にあります。しかし、その『国富論』の基は『道徳感情論』にあります。自由放任や市場原理主義などとは異なり、そこでは人間の幸福が論じられています。富と権力は決して、幸福をもたらさないと、述べられています」―経済学の泰斗のお2人の講演を拝聴し、また新聞で拝読したのですが、偶然にほぼ同様な見解を示されていました。
  さて、「水と空気はコモンズか経済財か」という議論とも関係してくる見解です。極論してしまえば「富と権力を追求する人々は可能な限り、コモンズを私有化して、そこから利益を得ようとする」、一方で「共に生きること、一所懸命に生きる共感に幸福を見出せる人々は、コモンズの共益者コモナーとして、コモンズを大切に護る」と整理できるのではないでしょうか。
  現実は、状況に応じて、その両極の中間のどこかに位置しているのでしょう。概して、欧米と非欧米とでは水への価値観に大きな差異があるようで、文化、歴史、宗教など総合的な比較によって、その差異の根源が理解できるかもしれません。
  しかしながら、IPCCの見解によれば、今日すでに、十分な飲料水を確保できない人々は13億に及び、気候変動はこうした状況をさらに悪化させ、たとえばアフリカでは7500万〜2億5000万人が深刻な水不足に直面することになります。さらに、天水農業の生産量は半減するとも予測されています。こうした状況にあっては、「水は生きるためのコモンズ」にほかならないでしょう。
「住民参加型」、「流域の全ステークスホルダーの協議に基づく」、「現地の人材・材料による灌漑普及」などは、コモンズ的要素もはらんだ、新しい水管理の取組みという側面もあるといえそうです。

編集委員

委員長  堀井 潔
委 員  鈴木 博 馬目雄一 岩本 彰 

※画像は、国際協力機構(JICA)・著者から提供されたものです。
※撮影は東チモール・セネガル・ブルキナファソが今村健志朗、バングラデシュ・ザンビアが其田益成、ラオスが久野真一の各氏で、いずれも提供は国際協力機構
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ラオス 撮影:久野真一/提供:JICA
ラオス 撮影:久野真一/提供:JICA

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