―国際機関の動向―
国際水田・水環境ネットワーク
第4回運営会議の開催結果について

農林水産省 農村振興局 水利整備課
係長 青木公平

図1 国際水田・水環境ネットワーク(INWEPF)
図1 国際水田・水環境ネットワーク(INWEPF)

 2007年7月5日から7日にかけて、タイのバンコクで国際水田・水環境ネットワーク(INWEPF)の第4回運営会議が開催されました。会議には、INWEPF加盟17か国中、14か国と3つの国際機関(国連食糧農業機関:FAO、国際灌漑排水委員会:ICIDおよびメコン河委員会:MRC)が参加し、日本からは、齋藤晴美農村振興局企画部長を団長に12名が参加しました(写真1)。

写真1 日本代表からの提案
写真1 日本代表からの提案

  会議は、2日間にわたって行われ、最終日には、メ・クロン灌漑センターへの現地視察が行われました。
初日の7月5日午前中には、5名の基調講演が行われ、日本からは東京大学の山岡和純准教授が「ソーシャルキャピタル概念の農業農村政策への適用」について発表を行いました(写真2)。

写真2 基調講演
写真2 基調講演

 2日目の7月6日の午前中には、昨年度の第3回運営会議で設立された3つのワーキンググループ(WG1:水田の多面的な役割に関するWG、WG2:政策の策定等に関するWG、WG3:水田の多面的機能の貨幣価値換算評価に関するWG)に分かれて、それぞれのWG会合が行われました。日本は、WG3の取りまとめ責任国になっており、近畿大学の八丁信正教授の司会により、農村工学研究所の合崎英男主任研究員から日本における水田の多面的機能の貨幣価値換算評価に関する研究事例、MRCからベトナムとタイにおける研究事例について発表されるとともに、今後のWG3活動方針等に関して議論が行われました。また、農村工学研究所による、日本における農業の多面的機能の貨幣価値換算の既往研究事例についてまとめた小冊子が配布されました。
 その日の午後には、第4回運営会議が開催され、八丁教授から現在までのINWEPFの活動報告、午前中のWG会合の報告がなされるとともに(写真3)、来年度の行動計画の提案が行われました。日本からは、アジア・太平洋水サミットに対するメッセージが提案されました。

写真3 WG3会合の報告
写真3 WG3会合の報告

 INWEPFの設立から、まもなく3年が経過しようとしています。運営会議も日本を皮切りに韓国、マレーシアそして今回のタイと各国持ち回りで開催され、来年度の第5回運営会議はインドネシアのバリ島で開催されることになっています。この間にINWEPFの活動などを通じ、関係国の間では、水田の多面的機能についてかなり浸透してきているように思われます。また、昨年度開催国であるマレーシアから3つのWGの設立について提案がなされ、今年はその動きが具体化されるなど、INWEPFも立ち上げ段階を終え、各国での開催を通じて徐々に地域的な取組みへと発展しつつあるように感じます。
 今後は、これまで行ってきた水田農業に関する情報交換に加え、これらを具体的にどのように各国の政策に反映していくのか、また、国際的な水に関する会議に対して、INWEPFの活動の成果をどのようにインプットしていくのかということが、重要になってくると思われます。
 これらを達成していくために、3つのWGが立ち上げられたことは、大きな意義があると思われます。
とくに国際的な水に関する議論の場においては、乾燥地・半乾燥地の水利用実態のみに着目して、プライシングやフルコストリカバリーなど効率性やコストのみに目が向けられ、アジア地域の水田灌漑の特徴や灌漑の多様性といったことが見落とされたまま議論が展開されているように見受けられます。こういった傾向を解消するには、アジア諸国の事例や定量的なデータなどを集積し、効果的にアジアの水田農業国の特質を示すことが必要になってくると思われます。
 今年の12月には、大分県別府市で第1回アジア太平洋水サミットが開催されます。また、2009年3月には、トルコで第5回世界水フォーラムが開催されることになっています。これらの水に関する国際会議は今後、ますます重要かつ影響力を持つものになっていくと考えられます。
 このような中で、日本のイニシアティブにより設立されたINWEPFが、アジアの地域的な取組みとして、水田灌漑の多面的な機能や持続可能な水利用などについてのアジア地域の意見を、国際的な水に関する会議へ、より強く打ち出していくことが期待されます。

《会議の結果など》
http://kromchol.rid.go.th/ffd/inwepf/4th/inwepf4%20con.html

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