―国際機関の動向―
国際食糧農業協会による
「アフリカにおける食糧安全保障」講演会開催

 国際社会においてアフリカに対する支援の強化が求められている中で、(社)国際食糧農業協会(FAO協会)は、農林水産政策研究所およびFAO日本事務所と共催で平成17年7月13日に標記の講演会を開催しました。アフリカ東南部マラウイ共和国出身でFAO技術協力局政策支援部長のマファ・チペタ氏による講演でした。
 アフリカでは、(1)経済発展が停滞し、所得の伸び悩み、更には食糧安全保障への脅威が顕在化している地域が多く見られること、(2)アフリカの主要な産業である農業は、厳しい自然条件と複雑な社会経済条件が制約となり、低い生産性に留まっていること、(3)貧困者の大宗が農村に居住していることから、食糧安全保障は農村部でより重要な課題となっていることが指摘されています。これらは国際社会でも重要事項と位置付けられており、各ドナー国・国際機関による支援が強化されているとともに、アフリカ自身も貧困削減・経済発展の努力をしています。
 チペタ部長からは、国際社会・ドナー国・国際機関によるアフリカ支援の動向、アフリカに対する支援はチャリティではなく資質・能力の向上であるべきこと、アジアの短期間での繁栄はアフリカに希望を与えるものであること、アフリカ支援における日本への期待などが語られました。
《詳細情報サイトはhttp://www.fao-kyokai.or.jp/events/050713-kouenkai.html》

―JIIDから―
“「水土の知」を語る(モンスーンアジアの末端整備)”の発刊

 当財団がシリーズで発行している“「水土の知」を語る”も版を重ね、このたびVo1.9【農業用水を考えるーその3】(モンスーンアジアの末端整備)の発刊に至りました。
 Vo1.9のテーマの背景には、近年、モンスーンアジアで整備されたかんがいシステムにおいて、基幹かんがい施設は整備されているものの、それに続く末端かんがい施設が未整備なために、圃場への配水が適正に行えず、かんがいシステム全体として機能を十分発揮していない事例が多く報告されていることがあります。また、「21世紀は水と生命の世紀である」ことが広く認識されるようになり、水についても国際的に活発な議論が展開されるようになりましたが、そのほとんどが上水道用水・工業用水などの都市用水や乾燥地域の大規模な畑地かんがい用水の立場から問題が提起され偏ったものになっています。
 国際的水議論が偏り、またモンスーンアジアのかんがい開発が所期の成果を挙げないことの最大の要因は、かんがい水をそれぞれの圃場に配水する末端水路の整備に対する認識が欠如し、具体的対策が講じられていないことにあります。
 本書は、まずかんがいの態様について論じ、次にかんがいの多様性への配慮を欠く国際機関や日本を含むドナー国がもたらした末端整備の遅れを具体的に指摘したうえで、インドネシア国における末端整備への取り組みの事例と、当財団が3カ国4地区で調査を試みている末端整備手法の開発を紹介し、さいごに今後末端整備を推進するために重要となる4つの課題を提起しています。

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