(C)(社)アジア協会アジア友の会
スリランカのポンプ式井戸

編集後記

 米価審議会の初代会長を務められた東畑精一先生の著書『米』に、次のようなエピソードが紹介されています―ワシントンで学会があり、米国の地理学者に「棚田は、それをつくった農民の労働を考えると、まさに日本のピラミッドである。エジプトのピラミッドはもう観光の史跡であるが、棚田は今日も米を生産し続けている。つまり、生きているピラミッドだ」と指摘された、と。先生はさらに、「そういえばインドにも、セイロン島にも、ジャワ島にも、シャムにもシナにも、この生きたピラミッドが存在して、農民が耕作をして、東洋人の主食たる米を作っている」と、ご自身の考えを述べられています。
 今号は国際コメ年を特集しましたが、地域でみれば、稲作の90%はアジアに集中しています。東畑先生は「東洋の特異性がこのピラミッドに現われているように思われる」とされていますが、その通りかも知れません。稲作、とりわけ水田はその収量からも、米の優れた栄養分からも、狭い農地でたくさんの人々を養わなければならないアジアには、必然の作物にちがいありません。
 今号でご紹介した『長江文明の探究』では、長江の中流域で稲作をしていた人々が、北方の畑作牧畜民族に侵略されて、雲南省に逃がれ現在、苗族として残り、下流域の人々はボートピープルとして東南アジアへ、そして日本へも渡ったと指摘されています。また、日本の神話のルーツも長江文明にあるとのことです。
 国際コメ年を契機に、食料としてのコメ、文化としてのお米を、改めて考えてみたいものです。

 


編集委員


委員長 境 忍
委 員 森田隆博 志野尚司 吉武幸子 岩本 彰 

画像は、・国際協力機構(JICA)・(社)アジア協会アジア友の会・著者から提供されたものです。
画像や文章はそれぞれの著作権者に属します。
写真と本文は直接関係が
ない場合もあります。

前のページに戻る