編集後記

「景観」といえば「美しくあって欲しい」との想いは誰しも強いものです。今号で特集しました「ランドスケープ」はこれまでに広く「景観」との訳語で論じられてきました。しかしながら、特集あるいは「人間の心の中に木を植える」「座談会21世紀のランドスケープ」で共通しているのは生産・生活を含めたダイナミックな概念です。かつてあった美しき景観を「守る」のではなく、人が「創る」ものであると考えてもよいのでしょう。
 里山にしろ、棚田にしろ「守って欲しい」と言うばかりでなく、そう想う人が自ら現地に行って汗を流す、あるいは支援の会費を払うという積極的な行動が優れたランドスケープを生み出すにちがいありません。また、現地でこうした動きの中心になっている人々に共通しているのは「感謝」の心です。三重県紀和町の丸山千枚田保存会の会長・小西さんは「細かい田んぼを守るのは大変じゃよのお。それでも地域の外の人までが、いろいろと支えてくれて、ありがたい」と。岩手県室根村で植林運動を進める畠山さんは「海に暮らす人たちから『上流に対する感謝の気持ち』を聞かされて、その感謝に、また私たち山間地に暮らす側から、お返しの気持ちで木を植えようって」と。
「有り難い」が日本文化のランドスケープだと、教えていただいた気がします。

 


編集委員


委員長 境 忍
委 員 永友紀章 志野尚司 吉武幸子 岩本 彰 

 

画像は、・国際協力機構(JICA)・水資源機構香川用水総合事業所・著者から提供されたものです。
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