サヘル諸国にバッタの大群が襲来

(左)サバクトビバッタにより、壊滅的被害にあった、モロッコのリンゴ果樹園。農夫は「今年は、夫婦ともども息子たちの働きで、生活をさせてもらうしかない」と嘆く。©FAO/G.Dian

 サバクトビバッタの大群が西アフリカ諸国に襲来しつづけている。一方、アルジェリア、リビア、モロッコ、チュニジアでは、事態は収束しつつある。FAOは国家規模の大々的なバッタ駆除作戦への支援として、援助国に対し追加資金の提供を要請した。
 多くの被害国では、このバッタを駆除し、今夏の農作物への深刻な被害を回避するだけの財源がないとFAOは警告する。また、すべての被害国で、飛行機、殺虫剤、自動車、噴霧器、技術支援が不足している。FAOによれば、対象地域への陸と空からの殺虫剤の散布と環境影響調査を実施するため、援助国からの緊急支援が求められている。
 EU諸国、韓国、スペイン、アメリカといった援助国およびFAOは、直接、あるいはFAOを通じて、被害国に対し、これまでに約900万ドルを提供してきた。さらに1000万ドルの資金援助が進められているが、このバッタの今夏の繁殖期が終わりを迎える10月まで、活動を継続するには多額の資金が不足する。
 最近、アルジェリアで開かれた閣僚会議には被害を受けた西アフリカの9か国も参加し、状況の悪化の程度に応じて、費用総額が5800万ドルと8300万ドルの2つのシナリオが作成された。この夏は、今後の大繁殖を制することができるか、重要な時期になるだろう。

(左)牧草地を争うことになる家畜はサバクトビバッタを回避するように誘導される。©FAO/G.Diana

 

大群の侵略
 FAOによれば、北西アフリカからの大群がこの数週間でモーリタニア、セネガル、マリ、ニジェールに侵入し、夏の作付けを妨げている。この大方の国々でこのバッタの大量の孵化が始まっており、多数の群れが誕生しつつある。今後の数週間でチャドを含む西アフリカには、さらに多くの群れが出現すると見られ、なかにはスーダン西部にまで到達する群れも出るかもしれない。わずかだが、ブルキナファソ北部まで飛来する恐れもある。

再侵略
 今後は繁殖が進み、9月中旬までには最初の群れの形成が始まって、収穫を待つ農作物に深刻な脅威となるだろう。次世代の繁殖にきわめて好都合な状況がサヘル地域で続かない限り、この群れはその後すぐに、北部および北西部を再び侵略すると思われる。このバッタの群れは、10月頃までは西アフリカをさらに南下することはないだろう。

(左)サバクトビバッタは体重と同じ量の植物を毎日食べる。バッタの群れは数10億匹に達し、作物にも牧草地にも大きな脅威である。©FAO/G.Diana

ダルフール州
 スーダンのダルフール州ではこのバッタは1匹も報告されていないが、8月末まではアフリカ北西部から群れが飛来する恐れが高い状態が続く。現状では、紛争の影響下にあるこの地域で大規模な防・駆除を実施するのはきわめて困難だろう。
 アフリカ北西部では、7月に170万ヘクタールを超える範囲でこのバッタの防・駆除が行われ、被害を受けたすべての国の防・駆除の総面積は2003年10月以降で約650万ヘクタールに達した。

(FAO News Room 2004年8月5日発表 本ページの写真:©FAO/G.Diana)

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