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地元住民の自立を図る砂漠緑化の試み

国際環境NGO FoE Japan

 私たちは、2001年4月より、中国・内モンゴル自治区ホルチン沙漠の緑化活動をスタートしました。これまでも、シベリアの森林破壊やフィリピンのダム問題などについて、環境破壊に直面する先住民に対する支援という視点から取り上げてきました。
 この砂漠緑化活動を始めたのも、砂漠化によって生活を脅かされている現地住民と協力し、継続的な砂漠化防止を実践したいと考えたからです。そんな思いから、すでにホルチン沙漠で緑化活動に取り組んでいる“沙漠植林ボランティア協会”の協力を得て、広大な砂漠の一画、緊急を要する55ha(1km×0.55km)を対象に、緑化活動に乗り出しました。

神奈川県の広さが毎年砂漠化
 日本にいる私たちにとって、砂漠化は縁遠い問題ではありますが、世界的に見ると、砂漠化により、地球上の陸地の1/4が、人口では9億人が影響を受けるといわれています。いま中国では、急速に砂漠化が進み、毎年、神奈川県の広さに匹敵する土地が砂漠化しています。中国の砂漠化は、過剰な土地開発や開墾、過放牧が原因で緑が少なくなり、土地が乾燥し、さらに西からの強風が砂丘の拡大に拍車をかけることにより、広がっています。
 そして、そこに暮らす人々は、進行する砂漠化により、農地や放牧地、さらには住居を奪われ、生活の場を失っています。近頃では、「このまま砂漠化が進めば首都を北京から移転しなくてはならなくなる」「日本の東北地方にも中国の黄砂が飛んできている」など、その深刻さは新聞でも報じられています。

特性の違う樹種を混ぜて植林
 ホルチン沙漠は、数千年前までは大草原が広がり、野生生物の宝庫でした。現在では地域の約80%が砂漠化し、なお進行中です。しかし、もともと草原があったということから、この場所は10mも掘れば良質の地下水が得られ、草木を養う潜在能力を十分に期待できる場所でもあります。
 緑化活動は、まず敷地を柵で囲うことから始まりました。これで、家畜による食害から草木が守られるのです。つぎに、柵沿いにポプラの苗木を植えます。これが防風林となり、砂が風で流されるのを防ぎます。
 植樹は、ブルドーザーで深さ70cmほどのV字溝をつくっておき、さらにその底をスコップで50cmから1m掘り、苗木を挿して、砂と水を交互にかけて植えていくという手法です。同じ方法で、敷地内に碁盤目状に植えていきます。植える苗木は、ポプラ、松、ニレ、アカシア、ニンキョウです。単一種だと病害虫による全滅の危険性がありますが、特性の違う樹種を混ぜることにより、樹は互いに助け合い、健全に成長することができるのです。
 樹列に囲まれた200m四方の土地は、適性を見ながら、住民による農地や果樹園、牧草地としての活用を進め、野菜・果樹・水稲など種々の農産物や、家畜の飼料を生産します。灌漑は地下水を汲み上げて、いったん貯水して、太陽で水温を高くしています。

住民と共同管理で緑を守る
 この緑化活動は、単に砂漠に木を植え、緑を増やすというものではなく、継続的な緑化活動が現地に定着することが重要です。緑化活動によって土壌が回復すると、農作物を作付けることも可能になり、住民の生活が潤います。このような緑化のメリットを住民が理解し、農業技術を身につけていけば、住民主体の自発的な活動がこの地に定着します。
 したがって、緑化活動は住民との共同作業であり、地元の小学生といっしょに植樹活動をしています。ここでは20年間、地元住民と私たちの共同管理で緑を守り、20年後には、緑化して返還する約束になっています。その頃には、いっしょに木を植えた子どもたちが地域の管理者になっており、自分たちが育てた森・田畑を大切にしてくれることを期待しています。

驚くべき自然の回復力
 活動開始時の現地は、緑がまったくなく、さらさらの砂地が広がっていました。本当にこんな砂地に木が根付くのだろうか、緑化をして農作物の作付けなんてできるのだろうか、という疑問を抱いたのですが、周囲を柵で囲い、柵沿いに防風林となるポプラを植えた効果が、同じ年の夏に目に見えて表れました。
 柵沿いのポプラは緑の葉をつけ、驚くべきことに、植えたポプラの辺り一面に、草が自生するようになったのです。苗木を植えたことにより砂が流れなくなり、さらに、苗木の生育によって土の保水力が向上したため、緑の回復軌道が動き始めたのです。
 私たちの活動地から少し離れたところに、沙漠植林ボランティア協会が緑化活動を行っている土地があります。その地域では、すでに植えた苗木が育ち、樹列の間の畑には、トウモロコシやソバが栽培されています。地元の住民が畑を管理し、作物を生産できるようになっていました。


植林作業を終えて現地の子どもたちと

年2回、緑化協力隊を募って現地へ
 FoE Japan では、春・夏と年2回のペースで、日本から緑化協力隊を募り、現地で緑化活動を行っています。昨年の夏は、高校生から70代まで、24名が参加し、現地住民と交流し、緑化活動は地元の小学生と行いました。みんなで力を合わせ、汗を流した植樹活動、現地の人たちとの交流、“沙漠”に対する理解を深めた早朝の沙漠セミナー、自然の大きさを感じて歩いた内モンゴルの大地、満天の星空、どれも日本での普段の生活では味わえない貴重な体験であり、感動の連続でした。
 現地での体験を通して、自然の大きな力を感じると同時に、その自然がものすごい勢いで壊されているのだという脅威も実感しました。そのなかで、私たちにできることは? 自然の復活をひとりでも多くの人が願い、小さくても確実な一歩を踏み出し、できることを続けることが、やがて大きな変化を生み出すのだろうと考えています。
(文責 事務局 和田鈴子)

《連絡先》
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