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(ハイチ)

モンサント社がGMバレイショの販売を中止

マルセラ・エセイド

 

 2001年の春、ファストフード界の巨人マクドナルド社が遺伝子組み換え(GM)バレイショの使用を取り止めたことを受けて、世界最大のバイテク企業モンサント社はアメリカとカナダでのニューリーフ・バレイショの販売を中止し、消費者と環境保護活動家を驚かせた。
 このニューリーフ・バレイショはモンサント社として初の遺伝子組み換え作物で、アメリカのバレイショの主要な害虫であるコロラドハムシに対する農家の対策として6年前に導入された。バレイショの遺伝子にこの害虫への天然の殺虫剤となるバクテリア、Bt菌(バチルス・チューリンゲンシス)の遺伝子を導入したものである。しかし環境保護活動家は、このバレイショは全細胞が殺虫成分を作るため、害虫がこの成分に大量に曝されることで耐性を急速に付けることになると警告してきた。
 このモンサント社のバレイショ、ニューリーフ種は種苗市場の5%以上のシェアを確保したことはなかったが、アメリカでは1996年の1万エーカーから99年には5万エーカーにまで作付けられていた。しかし、2000年になるとマクドナルド社やバーガー・キング社、マケインフーズ社、フリト・レイ社などの大口の顧客が遺伝子組み換えバレイショ商品の販売を中止したため、売上高は前年の80%まで落ち込んだ。アメリカで生産される年間220万トンのバレイショのうち、49%はフライド・ポテトに、11%はポテト・チップスに加工される(アメリカではバレイショは最も一般的な野菜である)。
 消費者団体は遺伝子組み換え食物の安全性に疑問を表明し、ヒトの食事にどんな悪影響を与えるかほとんど分かっていないとしている。分子生物学者であり“憂慮する科学者同盟”の弁護士であるマーガレット・メロンは、遺伝子組み換え作物は安全とも危険ともほとんど証拠が上がっておらず、「要するにそうした研究が進められていない」と警告している。
 そして生物学者でありモンサント社の子会社ネイチャーマーク社の取締役であるディブ・スタークは、「遺伝子の発現に関しては、私たちが理解していないことが多数ある」ことを認めている。最近もベルギーの科学者が、モンサント社のよく使われている遺伝子組み換え大豆には、当初、意図せずに導入された形質が備わっていることを発見した。
 2000年の劇的な売上高減少を受け、モンサント社はBt菌遺伝子に加えバレイショの巻き葉病ウイルスにも抵抗力のある、より強力な遺伝子組み換えバレイショを開発したが、市場の関心は戻って来なかった。
 モンサント社のローレン・ワッセル広報担当は、「このバレイショの中止は、主要な作物に集中するという戦略的判断によるものである」としている。同氏は「わが社がアメリカとカナダの農民へのGMバレイショ販売を中止した訳は、ファーマシア社との合併に伴い、トウモロコシや綿花、油糧種子、小麦などの主要作物に集中する新会社となったためです」、「この決定は主要作物を品種改良するという戦略の一部です」と語っている。
(『ワールドウォッチ』誌2001年6号より)

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