2024.2 FEBRUARY 69号

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OPINION

新たな開発協力大綱と農業農村開発協力について
農林水産省 農村振興局設計課 海外土地改良技術室長 鷲野 健二

1 はじめに

 2023年6月、新たな開発協力大綱が閣議決定された。開発協力大綱は、政府開発援助(ODA)の基本方針を示すものであり、1992年に政府開発援助大綱(ODA大綱)が策定され、2015年改訂の際に現在の開発協力大綱に名称変更された。今回は、それ以来8年ぶりの改定が行われたものである。

 新たな大綱では、国際社会が、気候変動、感染症、ロシアによるウクライナ侵攻などの複合的危機に直面していることを踏まえ、我が国のみでは様々な課題に対処することはできず、開発途上国とも協力する必要があり、開発協力の役割が一層重要になっているとされている。

 これまで農林水産省農村振興局では、農業農村分野の開発協力を推進する上で、大使館、JICA及び国際機関への海外人材派遣を積極的に行うとともに、かんがい排水技術を中心とした様々な国際協力の実施を図ってきたところである。今回、新たな大綱における農業農村開発協力の関係部分と、農村振興局における関連する取り組みをご紹介したい。

2 新たな開発協力大綱の概要

 新たな開発協力大綱は、「Ⅰ.基本的考え方」、「Ⅱ.重点政策」、「Ⅲ.実施」で構成されており、概要は以下のとおりである。

開発協力大綱の概要(2023年6月外務省)

Ⅰ. 基本的考え方

1.策定の趣旨・背景

・国際社会は 歴史的転換期にあり、複合的危機(①気候変動や感染症等の地球規模課題の深刻化、②自由で開かれた国際秩序への挑戦と分断リスクの深刻化、③これらと連動した途上国の人道危機等)に直面。

・新興ドナーによる債務持続可能性を軽視した借款は、途上国の成長に繋がらず、 透明かつ公正なルールに基づく協調的な協力が求められている。

・民間企業や市民社会等の多様なアクターとの連携や新たな資金動員に向けた取組がより重要に。

→ 危機の克服のため、価値観の相違等を乗り越えて国際社会が協力することが必要。日本はそれを牽引する立場にあり、開発協力の役割は一層重要に。

→ 外交の最重要ツールの一つである開発協力を一層効果的・戦略的に活用するため、大綱を改定し、開発協力の新たな方向性を示す。

2.開発協力の目的

(1) 開発途上国との対等なパートナーシップに基づき、途上国の開発課題や人類共通の地球規模課題の解決に共に対処し、 法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の下、平和で安定し、繁栄した国際社会の形成に一層積極的に貢献すること。

(2) 同時に、我が国及び世界にとって望ましい国際環境を創出し、信頼に基づく対外関係の維持・強化を図りつつ、我が国と国民の平和と安全を確保し、経済成長を通じて更なる繁栄を実現するといった国益の実現に貢献すること。

3.我が国の開発協力がよって立つ基本方針

(1) 平和と繁栄への貢献:非軍事的協力を堅持し、国際社会の平和と繁栄の確保に積極的に貢献。

(2) 新しい時代の「人間の安全保障」:指導理念と位置付け。個人の尊厳・自立のための 「人への投資」を重視しつつ、様々な主体間の連帯を強化していく。

(3) 途上国との対話と協働を通じた社会的価値の共創:途上国を対等なパートナーとし、社会的価値の創出(共創)を目指す。価値を日本社会にも環流し、日本経済の成長にもつなげる。

(4) 包摂性、透明性、公正性に基づく国際的ルール・指針の普及と実践の主導:包摂性、透明性と公正性といった開発協力のルール等の普及と実践を主導していく。

Ⅱ.重点政策

1.新しい時代の「質の高い成長」と貧困撲滅

・「質の高い成長」はますます重要に。脆弱層も含めた「包摂性」、気候変動や債務の「持続可能性」、経済多角化等による「強靭性」を伴う成長に取り組む。

・デジタルや食料・エネルギー安全保障等の課題にも対応(日本企業の進出の観点からも重要なサプライチェーンの強靭化・多様化、重要鉱物の供給先多角化等を通じ、日本経済にも貢献)。

2.平和・安全・安定した社会の実現、自由で開かれた国際秩序の維持・強化

・途上国の社会の平和・安全等は「質の高い成長」の前提。ガバナンス強化や人道支援・平和構築、海洋保安能力強化等を引き続き行う。特に、自由で開かれたインド太平洋(FOIP) のビジョンの下での取組を進める。

3.複雑化 ・深刻化する地球規模課題への国際的取組の主導

・気候変動(途上国の緩和・適応の対応能力向上)・環境、保健、防災、教育等の持続可能な開発目標(SDGs)の取組を加速化するとともに、2030年以降の国際的な議論への貢献を目指す。

Ⅲ.実施

1.効果的・戦略的な開発協力のための3つの進化したアプローチ

・上記の重点政策等の推進の観点から、ODAを進化させていくためのアプローチを示す。

(1) 共創のための民間、国際機関、公的金融機関、他ドナー、市民社会等との連帯。

(2) 我が国の強みを活かした新たなオファー型協力など能動的協力による戦略性の一層の強化。

(3) 柔軟な資金協力の実施、民間に合わせた意思決定の迅速化、緊急支援の改善等の制度の見直し。

2.開発協力の適正性確保のための実施原則(略)

3.実施体制・基盤の強化(略)

4.開発協力大綱の実施状況に関する報告(略)

3 新たな開発協力大綱における農業農村開発協力の関係部分

 開発協力大綱における、農業農村開発協力の推進に関係する部分をご紹介する。

(1) 人材育成や周辺インフラの支援

 「Ⅱ.重点政策」における「1.新しい時代の『質の高い成長』と貧困撲滅」の強化分野として、「食料・エネルギー安全保障など経済社会の自律性・強靭性の強化」が挙げられている。この中で、「食料の安定供給・確保は、開発途上国の持続的成長のみならず、我が国にとっても重要であり、人材育成や周辺インフラ整備等の支援に積極的に取り組んでいく」と示されている。

 また、同様に強化分野として「質の高いインフラ」が挙げられており、「我が国は、海上・航空等の安全管理、防災・強靭化技術、気候変動・環境の対応に資する(中略)水供給等について強みを有する。これらの強みを活かして相手国の社会課題解決につなげるため、インフラ整備と制度整備、運営・維持管理への関与、人材育成等による連結性といったソフト面での協力を組み合わせることにより(中略)『質の高いインフラ』の整備を推進する」と示されている。

 農業農村開発分野では、海外への人材派遣や各国からの研修員の受入れ等による人材育成、かんがい排水分野を中心としたインフラ整備等への支援に貢献してきているが、引き続きインフラ整備に係るハード・ソフト両面での支援に取り組んでいく必要がある。

(2) 気候変動対策への対応

 「Ⅱ.重点政策」の「3.複雑化・深刻化する地球規模課題への国際的取組の主導」の強化分野として「気候変動・環境」が挙げられている。この中で、「開発途上国の気候変動への対応能力を向上させるため、緩和策(温室効果ガスの排出削減・吸収増進等)及び適応策(気候変動による被害の回避・軽減等)の双方に対する支援を推進し、開発途上国の各開発課題への対処と気候変動対策の推進の双方に貢献する」と示されている。

 農業農村開発分野の協力は、深刻化する干ばつや洪水の被害を軽減、防止する適応策としての役割とともに、小水力発電や間断かんがいの導入等による温室効果ガス排出削減等の緩和策としての役割も有しており、気候変動の緩和策と適応策の双方に対する検討が必要となる。

(3) 我が国の強みを活かした協力

 「Ⅲ.実施」の「1.効果的・戦略的な開発協力のための3つの進化したアプローチ」において、「日本の強みを活かした魅力的なメニューを作り、積極的に提案していくオファー型協力を強化する」と示されている。

 オファー型協力の実施にあっては、我が国が有する高い技術力を活かし、包括的な協力パッケージの提案を推進することとされており、我が国の農村振興分野の技術を活用した総合的な支援のパッケージ化を検討する必要がある。

(4) 国際的な議論の主導

 「Ⅲ.実施」の「3.実施体制・基盤の強化」において、「開発協力に関するルール形成など国際的な議論を主導するため、我が国と国内外の大学・研究機関等のパートナーとの間で、政策研究やネットワーク形成を促進し、知的基盤を強化する」と示されている。

 農村振興局は、国際かんがい排水委員会(ICID)や国際水田・水環境ネットワーク(INWEPF)等において、水田農業の効率的水利用の議論を主導するなど、かんがい排水分野に関する国際的な議論に積極的に参加しており、今後もこれらの国際会議を通じ国際ルールメーキングに参画する必要がある。

4 農村振興局における取組

 農村振興局における、新たな開発協力大綱に関連する農業農村開発の事業内容の検討、海外への人材派遣、国際会議等による各国との交流について紹介する。

(1) 農業農村開発に関する事業内容の検討

ア アジアモンスーン地域の農業農村開発を通じた気候変動対策推進事業

 2022年4月に熊本市で開催された第4回アジア・太平洋水サミットにおいて、我が国は、アジア太平洋地域における水を巡る社会課題に対し、我が国の先進技術を活用した質の高いインフラ整備等を通じて積極的に貢献するとした「熊本水イニシアティブ」を発表した。このイニシアティブの中で、農業農村開発分野に関しては、農業用用排水施設の整備や水田の雨水貯留機能の活用を通じた農村の湛水被害軽減等の気候変動適応策と、小水力発電やICT技術を活用した水管理システムの導入等を通じた温室効果ガスの抑制等の気候変動緩和策を両立できる技術を「質の高いインフラ」として海外展開し、開発途上国の社会課題の解決と持続的な経済成長に貢献することが求められている。

 このことを踏まえ、本事業により、アジアモンスーン地域において、農業農村開発を通じた気候変動への緩和策及び適応策を両立する我が国の技術、製品等を活用した現地実証を行い、気候変動対策を伴う国際協力のモデルケースとしてアジア太平洋地域における我が国の農業農村開発協力の方向性を示すこととしている。この取組は、2023年から4か年を予定しており、ベトナム、カンボジア、ラオスを対象国とし、水田における間断かんがいによる温室効果ガスの排出削減の効果について、ICT水管理システムを導入した実証、田んぼダムの導入による浸水被害の軽減等の気候変動対策技術の現地実証を行い、気候変動対策技術を活用した農業農村開発の事業展開構想を作成する予定である。

イ 包括的農村振興モデル検討事業

 東南アジア諸国においては、経済発展に伴い、都市部では各種インフラの整備が進み、国民一人当たりの所得の増加と相まって生活スタイルが変化する一方、農村部では所得の増加が伸び悩み、都市部への人口流出による労働力の減少など様々な課題が生じており、農村の持続的な振興が課題となっている。

一方、我が国では、農村振興技術を活用し、農村が有する様々な地域資源を活用して活性化を目指す地域が現れている。

 このことを踏まえ、東南アジア諸国における農村の持続的な振興に資するため、本事業において本邦企業等が有する農業農村開発の技術・対策手法を活用した農村部のインフラ整備のあり方を検討している。この取組は、2023年から3か年を予定し、カンボジアをモデル調査対象国とし、我が国が有する農村振興対策をリスト化するとともに、リスト化した農村振興対策から複数の対策を組み合わせパッケージ化した農村振興モデル事業実施計画書を作成する予定である。

ウ かんがい排水情報基盤システム構築支援事業

 アジアなどの開発途上国においては、経済成長に伴う都市部への農業労働力の流出、気候変動による洪水・渇水の激甚化などが課題となっており、これらに対応するため、農業水利システムの更なる効率化・省力化が求められている。

 このため、本事業においてICT技術を活用したかんがい排水情報基盤システムの事業化に向け、計画手法等を取りまとめたガイドラインを作成し、同技術を活用した課題解決と本邦企業の海外展開を促進する。具体的には、テレメータ導入実績のあるタイ及びベトナムにモデル地区を選定の上、ICTを始めとしたイノベーションの活用により、既存農業水利インフラに係る管理・運営の高度化を図り、効率化・省力化を実現するための情報基盤システムに係る事業計画の検討及び設備導入後のシステム運用に係る方針検討のためのガイドラインを2024年度までに取りまとめる予定である。また、これと併せて、本邦企業の海外展開促進に資する事業展開構想を策定する予定である。

エ アフリカにおける稲作振興支援事業

 成長を続けるアフリカにおいて、我が国は食料安全保障への対応の一環から、サブサハラ・アフリカのコメ生産量の増加を目標とした国際イニシアティブである「アフリカ稲作振興のための共同体(CARD)」に積極的に取り組んでいる。

 アフリカでのコメ生産量の増加は、かんがい開発による水田面積の拡大が大きく貢献してきたものの、新規の大規模かんがい開発は財政への影響や環境負荷が大きいことから、今後は気候変動対策にも留意しつつ、既設かんがい排水システムの機能維持・強化など、持続可能な開発協力に移行していく必要がある。

 このため、アフリカの既設かんがい排水システムについて、我が国で培われた施設の機能維持・強化や再生可能エネルギーなどの技術を活用した持続可能な開発手法を確立し、事業計画検討プロセスのガイドラインや、施設の運用及び開発技術の普及・啓発のためのマニュアルを2024年度までに作成する予定である。

(2) 海外への人材派遣

 農村振興局からの海外への人材派遣は、1959年に始まり2022年までに延べ1,155人に上っている。ピークであった1997年には96人を派遣し、その後減少傾向にあるが、2023年11月時点で、38名(大使館29名、JICA専門家5名、国際機関4名)と、依然として多くの職員を派遣している。

 大使館に派遣された職員は、外交官として相手国政府との交渉や調整、政治・経済その他の情報の収集・分析、日本の広報文化活動などを実施している。特に、農業農村開発に関する経済協力のほか、農林水産物の輸出促進、みどりの食料システム戦略、民間企業進出のための各種情報の収集など、多岐に渡る任務を担当している。

 JICA専門家として派遣された職員は、政策アドバイザーとして、政策の企画・立案支援などを行うため先方政府機関カウンターパートの相談役の任務や、各種技術移転を担当する技術専門家(灌漑計画、基準策定、水利組合育成など)として、我が国がもつ技術の移転を行っている。

 国際機関に関しては、メコン河委員会(MRC)、国際連合食糧農業機関(FAO)、アジア開発銀行(ADB)、経済協力開発機構(OECD)及び国際水管理研究所(IWMI)へ人材派遣や拠出金の負担を行い、世界的な食料や水問題などの解決に向けた支援を行っている。

(3) 国際会議への参加等による各国との交流

ア 国際かんがい排水委員会(ICID)

 ICIDは、かんがい排水に係る科学的、技術的知見により、食料等の供給を世界規模で強化することを目的として、1950年に設立された自発的非営利・非政府国際機関である。2023年11月時点の加盟国は48カ国・地域、準加盟国は33カ国・地域であり、かんがい排水に係る技術や制度について広く情報交換するとともに、農業農村整備分野における日本の技術を提供できる国際貢献の場ともなっている。

 我が国は、設立直後の1951年に閣議決定に基づいてICID日本国内委員会を組織し、正式加盟した。ICID日本国内委員会の事務局は農村振興局設計課海外土地改良技術室が担い、大学、研究機関、民間企業等の関係者から現時点で19名の日本国内委員が構成され、各種委員会や作業部会等に参加し、情報提供や収集を⾏っている。2023年11月にインド・ビシャーカパトナムにおいて、第25回総会及び第74回国際執行理事会が開催され、「農業における水不足への取り組み」をテーマとしてシンポジウムやサイドイベントが行われ、日本国内委員から多くの発表が行われたところである。

 また、ICIDでは、歴史的、技術的、社会的に価値のあるかんがい施設を認定・登録するものとして、2014年に世界かんがい施設遺産の制度が創設されている。2023年11月の国際執行理事会において、新たに日本の4施設を含む19施設が登録され、これまでに世界の161施設が登録され、日本の登録数は世界最多の51施設となっている。関連する国内の取組として、「世界かんがい施設遺産地域活性化推進協議会」において、登録されたかんがい施設を活用した地域活性化の取組への支援が図られている。2023年10月に福井市において第2回協議会総会が開催され、遺産を活用した情報発信に関するセミナーや、通潤用水地区及び備前渠用水路地区による事例発表などが行われ、遺産登録地区関係者を中心に様々な意見交換が行われたところである。

イ 国際水田・水環境ネットワーク(INWEPF)

 2003年3月、農林水産省は第3回世界水フォーラム(京都)の一環として、FAOと共催で農業に関わる世界各国の大臣が参加する「水と食と農」大臣会議を開催し、この中で「食料安全保障と貧困軽減」、「持続可能な水利用」、「パートナーシップ」の3つのチャレンジを掲げた大臣勧告が採択された。INWEPFは、この3つのチャレンジの達成に向け、農林水産省が中心となり、アジアモンスーン地域を中心に水田農業を実施している17カ国及び関係機関(FAO,MRC、IWMI等)が参加のもと、2004年に設立されたものである。

 原則として年1回運営会議が開催され、農業用水の多様性及び多面的機能等についての取りまとめがなされ、世界水フォーラムやアジア・太平洋水サミットなど大規模な会議においてINWEPFの成果にかかる情報発信がなされている。2023年8月には第18回運営会議がエジプトで開催され、「多⾯的機能とフードバリューチェーンの強化」、「気候変動に対応したかんがい排⽔システムの近代化」、「水利用効率・水生産性の向上」の3つのワーキンググループにおける意見交換が行われ、2024年5月に開催される第10回世界⽔フォーラムにおいて、INWEPFメンバーによる知見を情報発信していくことについて、共通認識が得られたところである。

ウ 技術交流の実施

 農村振興局では、両国の技術力向上と協力関係を促進するために、中国、韓国、タイ、インドネシア、ベトナム等のかんがい排水所管機関との間で、ワークショップや現地視察等の技術交流を実施している。これにより、我が国の知見・技術を活用した農業用用排水施設の更新・整備を通じた強靭化や、農業用水の適切な管理を通じた効率的水利用を推進し、安定した食料システムの構築と気候変動に適応した地域づくりに貢献するとともに、我が国民間企業の海外展開を促進することを目指している。

5 最後に

 私は2019年4月から3年間、在ジンバブエ日本国大使館に勤務し、開発協力大綱に基づき5年に1度を目途に定められる国別開発協力方針(ジンバブエ国)の策定に携わった。私が勤務を始めた2019年にジンバブエは大干ばつに見舞われ、かんがい施設が十分でないため主食であるメイズ等の農業生産が減少し、約1,500万人の人口の半数以上が食料不足に陥ることとなった。また、電力確保の大部分を占める水力発電の水源であるカリバダムの水が枯渇し、外貨不足のため海外から電力を輸入することもできず、1日18時間を超える停電が発生するなど、ジンバブエ国民は異常気象により大きな影響を受けることとなった。このような状況を踏まえ、ジンバブエの国別協力方針の重点事項に、かんがい施設等のインフラ整備の推進や、これら施設の有効活用等による農業・農村振興を位置付けたところである。

 新たな開発協力大綱においては、質の高いインフラ整備や気候変動対策への対応等が示されており、農業農村開発分野に関する協力は、開発途上国との協力関係を構築する上でも、一層重要な位置付けになると考えられる。このため、農業農村開発に関する事業内容の検討を継続するとともに、海外派遣者、ICID等の国際会議、技術交流等により構築された各国とのネットワークを活用し、我が国がもつ技術や経験を活かした協力が効果的に実施されるよう、関係の方々と連携して組んでいきたいと考えている。


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