もっとグリーンウォーターの活用を、アフリカで!

独立行政法人 国際協力機構(JICA)農村開発部 技術審議役 田中卓二

 2018年6月、ルワンダのキガリで、グリーンウォーターの有効利用をアフリカで促進するための専門家会議が開催されました。湖沼水や河川水、地下水などのことを「ブルーウォーター」といい、降雨、あるいは降雪などが融けて、しみ込み、土壌中や植物に蓄えられる水のことを「グリーンウォーター」といいます。サブサハラ(サハラ砂漠以南)・アフリカ地域では依然として灌漑(かんがい整備が難しく、グリーンウォーターの有効利用が欠かせません。ブルーウォーターを主に利用する灌漑整備を進めるだけでなく、天水農業をはじめとしたグリーンウォーターを活用するための技術の普及や財政措置を、専門家レベルで考えていこうというのがこの会議の趣旨でした。

 会議は、スウェーデンのストックホルム国際水研究所(SIWI:Stockholm International Water Institution)とルワンダに拠点を置くアフリカ地域持続可能な開発目標センター(SDGC/A:SDG Center for Africa)などの共催で、SIWI事務局長、SDGC/A総裁のほか、国連機関(食糧農業機関:FAO、国際農業開発基金:IFAD)、国際機関(世界銀行、アフリカ開発銀行)、地域機関・国際NGOなどから約60名が出席し、2日間にわたって、グリーンウォーターの可能性や役割、課題などについて議論が行われました。

会議参加者(2018年6月 ルワンダ・キガリ市)
会議参加者(2018年6月 ルワンダ・キガリ市)

 アフリカでは、急速な人口増加、都市化、食料需要の増加、水資源の枯渇などを通じた水需要の急増という問題に直面しています。アフリカ全体の灌漑率は5.4%、サブサハラ・アフリカ地域に至っては3.2%に留まっている状況から、灌漑整備と併せてグリーンウォーターの有効利用を考えていくことは必須です。

 JICAでは、従来から、エチオピアやニジェールなどにおいて、雨水や季節河川を利用するウォーターハーベスティング技術など、グリーンウォーターを有効利用する技術協力に取り組んできました。旧緑資源機構が取りまとめた「サヘル地域砂漠化防止対策技術集」も、グリーンウォーター活用を考えるうえで貴重な資料です。JICAを代表して私が会議に出席し、これら日本の貢献事例を紹介するとともに、分科会の議長も務めさせていただきました。

 会議の締めくくりに当たって、SIWIからサブサハラ・アフリカ地域の水問題の克服に向けて、グリーンウォーター活用促進のための基金創設が提唱されました。今後、元首級などハイレベルの円卓会議も計画されています。会議の資料と議事録は、SDGC/Aのホームページからダウンロードできますので、ご覧ください。

 https://sdgcafrica.org/ourevents/events-african-water-revolution/

 この会議をきっかけに、従来、スポットの当たることの少なかったグリーンウォーターの有効利用が進み、アフリカにおける水問題・食料問題の解決に貢献することが期待されます。


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