JIID国際シンポジウム

「東南アジアにおけるアグリビジネスとコメのバリューチェーンの拡大」の開催

 平成28年11月21日、東京大学中島董一郎記念ホールで国際シンポジウム「東南アジアにおけるアグリビジネスとコメのバリューチェーンの拡大」が(一財)日本水土総合研究所(JIID)主催で開催された。

 JIIDは、平成25年度から農林水産省の補助により「農業インフラシステム海外展開促進調査」を実施している。このなかで、フードバリューチェーンを考慮しつつ、農業分野におけるインフラ整備を促進する新しいモデル構築を図るため、ミャンマーとカンボジアで水田モデル圃場(ほじょう)整備実証事業を行うとともに、コメのバリューチェーンをテーマとして、国内外の有識者や民間企業の方々を招き、シンポジウムを開催している。

 シンポジウムでは、冒頭、JIIDの齋藤晴美理事長が「これまでコメのバリューチェーンをテーマとした国際シンポジウムを開催してきたが、3回目となる今回は、その集大成として農業経済学者、海外の米穀貿易団体および農業機械メーカーから専門家を迎えており、民間分野によるコメのバリューチェーン拡大に焦点を当てて議論を行いたい。本日のシンポジウムが各国のコメ事情に関する相互理解の促進とアジア地域におけるコメのバリューチェーン構築の一助となることを祈念する」と述べた。

 続いて、グローバルフードバリューチェーン研究の第一人者である東京農業大学国際食料情報学部の板垣啓四郎教授が、コメを中心とした東南アジアのフードバリューチェーンの状況と、具体的な展開戦略、期待される成果などについて講演した。

 次に、カンボジア米穀連盟のホーン・ティエラ会長補佐が、カンボジアのコメ貿易が中国やEU諸国に集中している現状に対して、より多角的な戦略として、バリューチェーン強化によるコメの高付加価値化の必要性や、カンボジアのコメの競争力強化を図るための方針を説明した。

 ミャンマー米穀連盟のミョウ・アウン・チョウ副会長が、ミャンマー新政権下におけるコメビジネスの現状と課題を説明した。また、ミャンマー国内では、収穫時にコメが市場に集中するため、コメ価格の低下を引き起こしており、農家所得向上を図る観点からもマーケティングが重要であることを指摘した。

ミャンマー米穀連盟ミョウ・アウン・チョウ副会長の説明
ミャンマー米穀連盟ミョウ・アウン・チョウ副会長の説明

 さらに、株式会社クボタの吉田晴行機械海外本部長が、タイにおける農業機械の普及戦略を明らかにした。また、農業機械販売後のフォローアップ・サービスの徹底や、農業機械の一貫体系導入による農業生産性向上の提案活動に力を注ぎ、農家所得の向上にも取り組んでいるとの紹介があった。

 最後に、JIIDの石井克欣調査研究部長が、ミャンマーとカンボジアで行った水田モデル圃場整備の実証調査の結果を報告した。

 講演終了後、JIIDの角田豊総括技術監のコーディネートによりパネルディスカッションが行われ、まず、板垣教授から、タイの古米の放出による今夏以降のコメの国際価格の急激な下落など、最近のタイのコメ事情について紹介があった。その後、カンボジアやミャンマーのコメ政策と輸出戦略、さらにフードバリューチェーンの上流部に当たる農業生産基盤の強化と、農業機械化の促進に関する活発な意見交換が行われた。最後にコメのバリューチェーンの拡大には、価格政策の重要性、生産性の向上を支える基盤整備の促進、品質の優れた農業機械の普及、適切な輸出戦略や官民の連携などが重要であるとの共通認識に至った。

 シンポジウムには、コメの生産や流通に関心のある省庁、独立行政法人、団体、商社、米穀商、機械メーカー、大学、研究機関およびコンサルタントなど幅広い分野から80名近くが参加した。

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