─JIIDから─

ラオスにおける
ハザードマップ作成技術の移転活動

 JIIDでは、2008年より、農林水産省農村振興局の支援を受け、東南アジアの農村における洪水などの災害に対する対応能力の向上を目的とした「海外農業農村開発地球温暖化対策検討調査事業(農村防災体制強化対策調査)」をインドネシア、ラオス両国で実施しています。本事業の活動のひとつとしてArc View1)を用いたハザードマップの作成を行っています。とくにラオスでは、ハザードマップの基図を衛星画像から作成するところから取り組んでいます。本調査では、ALOS衛星の画像を用いており、数百ヘクタール程度の範囲であれば、1枚の画像に十分に収まり、値段は数万円程度です。

 さて、2010年度の活動では、両国のカウンターパートへのハザードマップ作成技術の移転を行いました。一般的に、技術移転は「見本を見せる」、「一緒に活動する」、「見守る」の3段階で実施するといわれています。09年度は、私たちにとっても手法構築の段階であると同時に、技術移転の段階では「見本を見せる」、「一緒に活動する」という段階でした。10年度は、いよいよ次の段階の「見守る」という段階を実施しました。以下、ラオスのボリカムサイ県パカディン郡ナムコウ灌漑システムのハザードマップ(洪水被害図)の作成を通じて行った技術移転の実施状況を紹介します。

写真1 地形図の作成(2010年9月)
写真1 地形図の作成(2010年9月)

 ラオスでは、まず灌漑局の職員に対し、Arc Viewを使った地図の作成法に関する1日間の研修を行いました。内容は、衛星画像の購入方法、Arc Viewへの画像の取り込み方、画像の判読方法などです。


 次に、同局職員が灌漑システムの洪水被害を事前調査し、同地域の衛星画像の選定・購入したのち、ハザードマップの基図の地形図を作成しました。そして、水管理組織や現地政府職員などの参加を得てワークショップを開催し、この地形図上に洪水被災箇所や湛水(たんすい)範囲を書き込んでもらうとともに、問題点の解決方法などを対策案として表にまとめました。参加者にとって、身近でかつ生活に直結する問題を議論しているので、ワークショップはたいへんに盛り上がりました。当研究所は活動の枠組みを決めたのみで、これら一連の過程のほとんどを、同局の職員が計画・遂行しました。

写真2 ワークショップ(2011年1月)
写真2 ワークショップ(2011年1月)

 この一連の技術移転の活動を通じて、局職員の意識も向上したと考えます。2010年の11月に、同局のプートン氏より、北部の灌漑関係の県職員を対象とする地図作成の研修を実施したいとの申し出を受けました。この研修では、彼らは総研の支援の下、研修の計画、教材の翻訳、研修の講師など、すべてを自分たちで行っています。

前のページに戻る