21世紀の食料・環境・ふるさとを考える
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一般財団法人 日本水土総合研究所への移行に当たって


 日本水土総合研究所は、平成18年に発足して7年を経過しましたが平成24年4月1日から新たに「一般財団法人」に移行しました。 「一般社団及び一般財団法人に関する法律」に基づいて、内閣府から認定を受けたものです。 今後当総研は一般財団法人として、これまでよりも柔軟な事業の展開を推進することも必要と考えますが、 従来の調査研究の実施に加えて、新たに公益目的事業を行うことが義務付けられたこと等により、 これまで以上の技術力と知識力に基づいた高度な調査研究の実施と共に、より円滑で厳しい運営が 求められることが予測されるところです。

 今後は、農業農村政策の新しい目的のための課題解決に向かって調査研究を行っていくことになりますが、 基本的な課題があると考えます。第一の課題としては、平成22年に策定された「食料・農業・農村基本計画」 において、供給熱量ベースの食料自給率を、平成20年度から平成32年度までに41%から50%にまで高めるという目標です。

 第二の課題としては、気候変動に伴う地球温暖化の進行により、大気の温度が上昇し、 豪雨や干ばつの発生頻度の増加、海面上昇に加えて自然生態系に対する深刻な影響が発生する おそれが高まっていることです。

 第三の課題としては、世界の人口が2050年には90億人に増加すると予測される中で、 農地の面積の拡大がほとんど見込むことができず、増加する食料需要に応えるためには、 農産物の面積当たりの生産量を拡大していかなければならないということです。

 このような課題を踏まえ、わが国の食料と環境を考えると、今後日本人が安全で安心して生存していくためには、 国民的に農業と農村についてもっと重要視するという合意形成が不可欠であると思います。

 農村地域には、豊かな農地や農業用水といった多様な物的資源と東北大震災で認識された 優しさと強さあふれる人的資源があります。このような地域資源を有効に利活用して 豊かな田園空間や自然生態系を含む環境保全を図っていくことが、わが国の生存基盤を確立する上での 大前提になっていると考えます。このため「水と土と緑」からなる「田園空間」に存在している地域資源を保全し 継続的にその価値の最大化を目指した「国土経営」という視点と、効率的かつ効果的に農村振興を実現するため、 学際的かつ省際的な視点からの政策総合による社会的共通資本の保全整備を進めることが、 農業農村整備事業の役割であると考えています。

 このようにわが国の発展のためには農業と農村を振興し、都市と農村の調和を意識したバランスある 農業農村整備事業を推進していくことが、大きな役割を果たすものと確信しています。 そして、わが国の農業農村整備事業の実施を通じて確立してきた技術を世界の発展途上国に情報発信していくことも、 世界に貢献することであると考えます。

 食料の増産が急務である人口の増加が著しい開発途上国では、わが国の技術がそのまま適用できるわけではありません。 しかし、こうした情報を共有することによって、開発途上国の技術者と共に双方の国に応用することで、 地球環境や世界人口に関する問題から新たな食料危機ともいうべき地球的課題を解決出来ると確信しています。

 また、農業農村整備事業について平成24年3月に新しい土地改良長期計画が閣議決定されました。 この長期計画の理念としての政策課題は、地域全体としての食料生産の体質を強化する"農を「強くする」"、 震災復興、防災・減災力の強化と多面的機能の発揮を目指す"国土を「守る」"、そして、農村の協働力や地域資源の 潜在力を活かしたコミュニティの再生を図る"地域を「育」む"が掲げられています。

 一般財団法人日本水土総合研究所としては、今後とも3つの課題を踏まえるとともに決意を新たに 新しい土地改良長期計画の政策課題に立脚し、農業農村整備事業の一層の充実に向けて調査研究を 続けていきたいと考えています。調査研究に当たっては農業農村の知を究めシンクタンクとしての 役割を果たすよう、真剣に取り組んでいく所存です。

一般財団法人 日本水土総合研究所
理事長  森田 昌史
平成24年4月1日

[注:「国土経営」は平成21年2月に商標登録をしております。]