第54回ICID執行理事会について 農林水産省農村振興局設計課長 齋藤 晴美
第54回ICID国際執行理事会は、平成15年9月にフランス・モンペリエで開催されました。54以上の国々び国際機関から360人以上が集まり、日本からも23名が参加して活発な議論が行われました。 ICID各作業部会のテーマを見ますと、第3回世界水フォーラムでの議論を踏まえて、それぞれの作業部会が、これまでの検討テーマに加え、水フォーラムのフォローアップを併せて検討を実施したり、他の作業部会と連携を深めより幅広い観点から議論を深めていこうとする動向が見られます。 特に、ICIDとして21世紀の水問題に向けての考え方を整理していくため、検討議題を絞ったタクスフォースを設置し(TF1:第3回世界水フォーラムへの提案準備の方針(総括)、TF2:食料生産、食料安全保障及び貿易問題への見解、TF3:かんがい排水、洪水制御によりもたらされるサービスの社会経済的持続性への見解、TF4:ベンチマーキング(指標)への見解、TF5:かんがい排水や食料供給にとって適切な新たなダム開発での調整についての見解)、それぞれのテーマでの深めた見解が得られるよう議論されてきた報告書の最終とりまとめについて検討されています。 なかでも多様なシステムと比較した分析を行い、かんがいシステムの実施上の改善を図っていくベンチマー キングの導入に関する議論が盛んに行われました。今回の執行理事会では、ベンチマーキングとして、利用者が必要とするサービスの質についての管理を導入することをテーマにワークショップを開催し、利用者が必要とするサービスの質の定義、管理者と利用者との間にある技術、資金、管理上の委託の特徴は何かといった基本的なベースから議論が行われました。これには多くの国から関心が寄せられ、多数の国々が参加しました。 また、FAOと共同して能力開発(キャパシティービルディング)のワークショップも開催しています。これは、水や食料の安全を確保するために、持続的な水源開発を行うフレームワークを確立する一つの重要な鍵として、能力開発への認識が高まっています。この能力開発の一環として農家へのかんがい排水に関する技術的知識等の啓発普及を行い、それによって食糧生産のために農業分野で増加している用水をより節減できると考えられています。このような考え方に基づき、能力開発を推進していく上での様々な課題、例えば、能力開発を計画に位置づける際の課題や実行に関してどのような方法があるのか、どのような課題が発生したのか、能力開発を一層進める上でよりよい方法はないのかなどについて会議の一日を費やして議論されました。 このようなICIDでより具体的な課題を設定した水フォーラムのフォローアップが進展する中で、農林水産省でも、アジアモンスーン地域の水田かんがいに関する議論を促進するため、水田や水環境に関する研究ネットワークを構築して情報交換等を行う国際水田・水環境ネットワーク(INWEPF)設立の情報提供と参加の呼びかけを実施しています。さらに、ICID日本国内委員会としても、第3回世界水フォーラムのフォローアップとして世界の多様なかんがいや多面的機能についての情報を収集・整理するワークチームを設置することを提案し、その活動を通じて、持続的な水利用を行うためのかんがいが有する様々な機能に対し、その機能の明確化や参加各国がその役割について認識を深めていくことを目指しています。 今後、このような取組が進展し、食料の安全保障を向上させ、貧困を撲滅するために、持続的でない水管理が削減され、効率的な水利用と管理を通じ広範な農業・農村開発が行われ、農村地域での収入の機会を得るという目標がICID活動によって具体的な成果となって現れることを期待します。 |