巻頭言

第18回ICID総会のテーマに触れて

農林水産省農村振興局事業計画課長 林田 直樹

 今年(平成14年)のICID国際執行理事会は、7月にカナダ・モントリオールで開催されました。今年は3年に一度の総会も併せて行われ、70以上の国及び国際機関から1000人以上が集まり、日本からも27名が参加して活発な議論が行われました。
 ところで、ICIDの第1回(設立)総会は、昭和26年(1951年)1月にインド・デリーにおいて開催されましたが、日本は正式加盟前のオブザーバーとしての参加でした。したがって、日本にとっては、昭和29年(1954年)のアルジェリア・アルジェにおける第2回総会が、いわば正式な初参加でありました。
 さて、その第2回総会におけるテーマは、
  課題3: 技術的、経済的面から見たかんがい水路、排水路、盛土、河川堤防、貯水池等における余裕高の問題
  課題4: かんがい排水組織下における地下水の状況
  課題5: 特に雑草発生防止の見地からみたかんがい排水路の維持
  課題6: 地下水。そのかんがいのための利用。単位面積又は流域当たりの安全取水可能量。帯水層の人為的な再補給並びに地下貯水池の計画的利用
でした。また、今次総会との丁度中間点に当たる第10回総会(アテネ・ギリシャ)におけるテーマは、
  課題33:かんがい事業の経済評価について
  課題34−1:排水技術と施工について
  課題34−2:農業用暗渠の迅速な設置方法
  課題35:かんがい排水組織の維持管理ついて
そして、今次第18回総会では、
  課題51: 限られた水資源と人口増加により影響を受ける食糧生産、貧困緩和及び環境上の問題
  課題52: かんがい、排水及び洪水調整の統合と管理
というテーマの下、活発な議論が行われました。
 これら3つの総会におけるテーマを比べますと、たった3回分だけの比較であることや総会開催地の地域性もあることを割り引いても、第2回総会の「技術的・独立・地域的なテーマ」から、今次総会のそれは、「社会的・複合的・広域的なテーマ」に移り変わっていった様子が見て取れます。
 このような移り変わりは、第2回から第18回総会へと時間が50年近くも経過していることを考慮すれば、或る意味当然ではありますが、会員の皆様がICID活動等を通じまして、日頃感じているかんがい排水を巡る状況の変化が、端的に表れているものと思い紹介させていただきました。ICID活動もかんがいと排水の領域だけでの議論を展開しているわけにはいかず、国際機関や他のセクターとの総合的調整といった機能を担いつつあると言うことだと思います。
 ご承知のように、第3回世界水フォーラムの開催まであとわずかです。農林水産省が国連食糧農業機関(FAO)と共催で行います「水と食と農」大臣会議の準備も大詰めを迎えております。ICID総会におけるテーマの変遷と同様、この世界水ファーラムという場で、かんがいに関して、「社会的・複合的・広域的な」観点から様々な議論が行われることでしょう。
 ICID日本国内委員会としても、農業農村整備関係団体と共催で、主要テーマ「農業、食料と水」関係のセッションを3月19日及び20日に京都国際会館等で行う予定です。是非、会員の皆様におきましては、このようなセッションを含めた世界水フォーラムへの積極的な参加をお願い申し上げます。

閉じる