巻頭言

農林水産省農村振興局事業計画課長齋藤晴美

 平成12年6月に事業計画課長を拝命して以来、同年7月末に東京で開催した「水田農業におけるかんがい排水の持続的発展に関するアジア地域ワークショップ(東京ワークショップ、同年11月に南アフリカ共和国ケープ・タウンにおいて開催され)」た第51回国際執行理事会、そして平成13年9月に韓国ソウルにおいて開催された第1回アジア地域会議及び第52回国際執行理事会と、多くのICID活動に参加する機会に恵まれました。
 平成12年7月の東京ワークショップでは、シュルツICID会長を始め、16カ国、3国際機関から約130名の参加を得て、論文発表や活発な意見交換が行われ、最終日には、アジアモンスーン地域における水田農業の重要性についての認識や、アジア地域における協力のためのネットワークづくりの必要性、アジアモンスーン地域のICID関係者が今後取り組むべき課題などを含む東京宣言「水田農業の持続的発展に向けて」が採択されました。
 また、第1回アジア地域会議及び第52回国際執行理事会においては、冒頭、谷山日本農業集落排水協会特別顧問から「水田かんがいを通じた持続的な農業と農村開発:地球的課題への対応」と題する基調講演が行われた他、わが国から多くのかんがい排水技術者も積極的に分科会やワークショップ等に参加しました。その結果、会議最終日に採択された「ソウル宣言」においては、アジアの稲作が、経済成長、農村環境や伝統的文化の継承、農村地域の活性化等に貢献しているという認識が確認され、稲作の発展、かんがい効率の向上、農村環境の保全、農村社会の活性化等のため、アジア諸国の密接な協力が必要であると確認されました。
 さらに、第52回国際執行理事会の最終日に行われたICID副会長選挙においては、ICID日本国内委員会からご推薦申し上げた当協会の谷山会長が、協会皆様のご支援、ご協力により、イラン、メキシコの候補者とともに、副会長に選出されました。谷山会長におかれましては、長年のICID活動への貢献が高く評価され、無投票で選出されています。
 一方、すでにご承知のこととは思いますが、平成15年3月に京都市を中心として開催予定の第3回世界水フォーラムの成功に向けて、橋本龍太郎元総理を会長とする「第3回世界水フォーラム運営委員会」や政府としての「第3回世界水フォーラム関係省庁会議」が設置されるなど、その準備が進められているところです。
 世界の淡水資源の取水量の約7割は農業用水であり、その開発と管理に責任を有するかんがい排水技術者の責務は大きなものです。第2回世界水フォーラム(2000年3月、オランダ・ハーグにおいて開催)においては「世界水ビジョン」とともに、農、業用水分野のビジョンとして「食料と農村開発のための水」が策定されました。こ、のとりまとめに対し、ICIDは大きな貢献を行いましたが、第3回世界水フォーラムに向けて、ICIDでは、すでに3つのタスクフォースを設けて準備を進めています。
 ICID日本国内委員会としては、アジアモンスーン地域における水田かんがい農業の発展の経験をベースに、世界の水問題に対して積極的に発言を行うことが必要と考えています。具体的には、ICIDの設けたタスクフォースのメンバーとして、日本国内委員会からも参加する他、先の第52回国際執行理事会においてICID本部と日本国内委員会の共同でバーチャル・ウオーターフォーラム会議室を立ち上げることを提案し、了解され、すでに「アジアモンスーン地域における水田かんがいの多様な役割」等をテーマとする会議室を設置したところです。
 このように、今後ともわが国のICID活動が、益々活発に、またさまざまな国際的場面に、その活動の幅が広がっていくことと思いますが、日本ICID協会の会員の皆様からのさらなるご指導、ご支援を宜しくお願い申し上げます。

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