WG−YPF設立に向けて 日本ICID 協会
会長谷山重孝 日本ICID 協会は、協会内部に若手かんがい技術者の会を設け、国際灌漑排水委員会(International Commission on irrigation and Drainage 以下「ICID」・本部ニューデリー) のワーキンググループ( Working Group on Yo ung IrrigationProfessionals Forum 以下「WG-YPF」)に参加することにしました。ICID には、3つのコミッティと約30 のワーキンググループがありますが、WG-YPF とは、このワーキンググループの1つで、1995 年開催されたローマの執行理事会から発足したものです。目的は、言うまでも無く、次の時代を支える若手の技術者に、ICID 活動を通じてICIDを理解してもらうことであり、資格は40歳までとなっています。WG-YPF 設立後、日本は、毎回ICID 会議に出席する方の中から年齢の若い方が会議に出席することにしていました。しかし、各国とも徐々に国内に組織を作って、その代表をICID に送り出すようになってきましたので、日本としても国内の組織化を図る必要性が生じてきました。 言うまでも無く、日本国内委員会(会長・中村良太)の中にWG-YPF 組織を設けることが本来の形ですが、日本のICID は政府加盟ですので、組織規定のような色々面倒な手続きが必要になります。そもそも、日本国内委員会には、会長と事務局長しか決められていません。そこで、代案として、日本ICID 協会の中に若手技術者の会(WG-YPF)を設け、会員を募集し、その代表がICID の会議に出席することにしました。すなわち、WG-YPF は、日本ICID 協会の内部組織ですが、協会が財政的支援をしながら、WG-YPF のメンバーにより自主的に運営されるものです。 WG-YPF 設立総会は、去る7 月25 日、盛岡の農業土木学会総会に併せて開催され、各大学、独立行政法人「農工研」から10 名の方々が参加しました。このことは農業土木学会誌により御連絡しましたが、日本ICID 協会では、今後も希望者を募って行きたいと考えています。このWG-YPF に参加されたメンバーは、日本国内委員会を通じ、直ちにICID 本部に連絡されました。日本ICID 協会の下部組織としてWG-YPF を位置付けると言うことは、協会としても大変望ましいことです。日本ICID 協会は、1985年設立されたのですが、設立以来の会員は老齢化が進む一方、新規の会員が少ししか増えていない状況でした。ICID 協会は、WG-YPF 会員を迎えることにより、より若い会員が増えることになり、今後のICID の活性化に繋がることが期待できるから です。 さて、ICID のワーキンググループ(WG-YPF)には、現在20 カ国(ブルガリア、中国、チェコ、エジプト、フランス、インド、インドネシア、イラン、日本、韓国、パキスタン、スロバキア、南アフリカ、スペイン、スーダン、タンザニア、タイ、ウガンダ、ウクライナ、ザンビア)が会員として登録されています。しかし、WG-YPF メンバー自身が国際会議に出席するのは限られていて、今回、韓国で開催された会議では、中国、フランス、イラン、韓国、日本の5 カ国が出席しただけです。やはり、若手の技術者を出すほど各国とも豊かでないからだと思います。日本ICID 協会は、出来るだけ毎年代表を送るよう努力して、世界のICID 活動活性化の一助になることを期待したいと思います。 ICID は、世界でただ1つの灌漑排水に関する技術・研究の団体です。純粋研究を行う一部の研究者にとっては物足りないところもあるかもしれませんが、灌漑排水という学問の目的が、環境を保全しながら食料を効率的に生産する手段と位置付けるなら、ICID は極めて格好の舞台です。なぜなら、環境や食料生産は、狭い日本だけでの議論では不十分だからです。これに対し、ICID では、世界的視点で議論することが出来、また、研究者だけでなく政策担当者もこれに参加していますし、ほとんどの関係する国際機関も参加しています。これから、若手技術者・研究者を含め、多くの方々がICIDに参加され、世界の舞台で活躍することを期待します。 |