ICID4世界かんがいフォーラム・第76回国際執行理事会(IEC)

結果概要

1.概要

ICID第4回世界かんがいフォーラム・第76回国際執行理事会(IEC)がマレーシア・クアラルンプールにおいてに開催された。

(1)   日時 202597日(日)〜13日(土)

(2)   会場 World Trade Centre Kuala LumpurWTCKL)、MALAYSIA

(3)   総会テーマ

 Main-ThemesIs irrigation a sunset industry?(灌漑は斜陽産業か?)

Sub-Themes 1Challenges of irrigation and drainage for food security in the Changing world (変化する世界における食の安全への灌漑排水の挑戦)

Sub-Themes 2Technology and modernization in the agricultural sector towards food security(食の安全に向けた農業分野の技術と近代化)

Sub-Themes 3Innovation policy, service delivery, and financing mechanisms to meet the challenges of the future(将来の課題に適合した技術革新政策、サービス政策、財政メカニズム)

Sub-Themes 4Nature-based solutions in agriculture to foster ecological resilience(農業における生態系回復力の促進に向けた自然に基づく解決策)

<メインテーマの趣旨(ICID資料より)>

過去20年間、特に東南アジアや多くの発展途上国では、灌漑が農業生産性と農村開発の中心であり続けてきたが、進歩と課題の両方を認識することが不可欠である。過去20年間、灌漑技術は目覚ましい革新を遂げてきており、点滴灌漑システムやスプリンクラーシステムの導入から精密農業の採用まで、これらの進歩は水管理に革命をもたらした。灌漑は、農村地域の経済成長と生活の向上を促進する上で重要な役割を果たし、多くの開発途上国において、小規模農家の生命線となり、食料安全保障の達成と所得水準の向上を可能にしてきた。さらに、コミュニティベースの灌漑制度の発展は、社会的結束とエンパワーメントを促進してきた。これらの成果にもかかわらず、灌漑セクターは、水不足、気候変動、環境悪化といった深刻な課題に直面しており、これらは灌漑慣行の持続可能性を脅かす喫緊の課題となっている。例えば、東南アジア諸国では、地下水の過剰汲み上げと非効率的な水利用が、灌漑の長期的な存続可能性に対する懸念を引き起こしている。これらの課題に対処するには、効果的な政策とガバナンスが不可欠。開発途上国の政府は、統合的な水資源管理と持続可能な灌漑慣行の推進に取り組んでいるが、これらの政策の実施には、限られた財政資源や制度的能力といった障害がしばしば存在する。灌漑の将来を考える上で、技術革新、環境管理、そして社会経済開発のバランスを取った包括的なアプローチを検討することが不可欠。持続可能な灌漑システムを実現するには、政府、民間セクター、そして地域社会の協働が鍵となる。「灌漑は斜陽産業か?」という問いは、これまでの進歩と、残された課題の両方についての考察を促すためのものである。課題は山積しているが、灌漑分野における革新と成長の可能性は計り知れない。共に力を合わせれば、灌漑が農業開発と食料安全保障にとって引き続き重要な要素であり続けることができるであろう。

(4)   参加者

・日本国内かんがい排水委員会委員(JNCID16

渡邉紹裕委員長、奥田透委員、加藤亮委員、木村匡臣委員、久野叔彦委員、越山直子委員、長野宇規委員、乃田啓吾委員、松野裕委員、皆川裕樹委員、向井章恵委員、吉川夏樹委員、清水克之委員、杉浦未希子委員、森卓委員、福田信二委員

・世界かんがい施設遺産登録地区関係者 4

(竹田のかんがい用水群)

竹田市 土居昌弘市長、荻柏原土地改良区 佐藤慶一理事長、

竹田市農林整備課 吉野謙吾課長、高橋英明課長補佐

  ・農林水産省農村振興局 6

青山健治次長

海外土地改良技術室 野伸室長、藤本敏樹課長補佐、高梨志健係長、

藤田和季係長、中山慶祐係長

・日本水土総合研究所 3

山内勝彦調査研究部長、宮川賢治主席研究員、海老原健二主任研究員

・日本水土総合研究所・日本ICID協会の若手かんがい技術者派遣プログラム 2

NTCコンサルタンツ(株)東北支社北東北事務所 石本帆乃技師

近畿大学大学院農学研究科環境管理学専攻 岡山貴史氏

 

    ・北海道開発局2

    農林水産課 佐藤空専門官、農業設計課 大杉周作課長補佐

●ポイント

第4回世界かんがいフォーラム

   710日、テーマ「かんがいは斜陽産業か」に基づくセッション、国際ワークショップ・展示会等が開催された。

   7日、大会に先立ち「女性活躍タスクフォース部会(TF-WEWN)」、「気候変動部会(WG-CLIMATE)」に関する国際ワークショップが行われ、日本国内委員が発表を行った。

   8日、開会式が行われ、農林水産省農村振興局の青山次長、日本ICID国内委員会の渡邉委員長及び奥田副委員長他が出席した。ホスト国であるICIDマレーシア国内委員会のユスリナ委員長、ICIDマルコ会長、FAOLifeng Li部長、世界水会議(WWC)Loic Fauchon議長の挨拶後、マレーシア農業食料安全省のMohamad大臣による開会挨拶が行われた。

   8日〜10日かけて世界灌漑フォーラムにおけるメイン・サブテーマごとの全体会議及び技術会議とともに、サイドイベントが行われ、日本国内員が分担して参加・対応した。

   特に日本国内委員会が3つのサイドイベント(SE3・5・9)を主催・共催し、青山次長が開会挨拶を行うとともに、各委員や事務局から、日本の取組や知見を発信した。

   SE5では、那須野ヶ原土地改良区連合の星野恵美子専務理事が「日本の農業用水管理における女性参画の現状と取組」について発表した。

   日本水土総合研究所による若手技術者派遣プログラムにより参加したNTC(株)東北支社の石本帆乃技師が「福島県の国営灌漑排水事業地区における灌漑管理システムの実態分析」と題して、技術会議において発表を行った。また、同プログラムにより参加した近畿大学大学院農学研究科博士課程1年の岡山貴史氏が「中山間地域における柿栽培のためのスマート灌漑システムの導入」と題したポスターセッションを行った。

   SE15では、中国国内委員会、マレーシア国内員会等の参加により第1回世界かんがい施設遺産会合が開催された。

 

 

  76回国際執行理事会(IEC

   1013日、世界かんがい施設遺産等の表彰、常任委員会・作業部会の開催、新役員選挙が行われ、日本国内委員、事務局等が参加した。

   常任委員会・作業部会では、複数の会議で日本国内委員が議長、副議長、書記を務めるとともに、研究成果の発表等を行うなど、日本の取組や知見、プレゼンスの発信が積極的になされた。

   10日、湯の口ため池・井出(熊本県)及び竹田のかんがい用水群(大分県)が「世界かんがい施設遺産」に認定され、出席した竹田市長、佐藤荻柏原土地改良区理事長が認定証及び盾を受理した。

   13日、執行理事会が開催され、副会長選挙(改選3名)では、投票数の多い順にMs. Cristina Clemente Martínez(スペイン)、Mr. Sanjeeb Baral(ネパール)、Engr. (Mrs.) Esther Oyeronke Oluniyi(ナイジェリア)が当選した。

   今後の決定済みICID会議は次のとおり。

ü  77IEC・第26回総会:フランス・マルセイユ 12-18 Oct 2026

ü  78IEC・第5回世界かんがいフォーラム:中国・北京 2027 5月予定

 

 

2.国際ワークショップ(9月7日)

大会に先立ち、灌漑環境の持続的再生部会(WG-SCER)、女性活躍タスクフォース部会   (TF-WEMN)、気候変動部会(WG-CLIMATE)、水・食料・エネルギー−ネクサス部会(WG-WFN-N)に関する国際ワークショップが行われた。主な日本国内委員会の対応は次のとおり。

(5)   国際ワークショップ-2:女性活躍タスクフォース部会(WG-TF-WEMN

渡邉委員長、杉浦委員、越山委員が参加し、越山委員が「日本における持続可能な水管理への女性参画に向けた取り組みと展望」と題して発表を行った。

天井, 屋内, 部屋, テーブル が含まれている画像

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(渡邉委員長)       (越山委員)      (杉浦委員による質問)

 

(6)   国際ワークショップ-4:気候変動部会(WG-CLIMATE

長野委員が司会を務めるとともに、同委員が「リモートセンシングと気候変動シナリオの併用による日本における水稲移植時期の移行推定」と題した発表を行った。

   テレビを見ている人たち

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(長野委員)

3.開会式(9月8日)

式典には、日本から農林水産省農村振興局の青山次長、日本ICID国内委員会の渡邉委員長及び奥田副委員長他が出席した。

マレーシア国家斉唱の後、ホスト国であるICIDマレーシア国内委員会のユスリナ委員長による歓迎あいさつに引き続き、ICIDのマルコ会長、FAOLifeng Li部長、世界水会議(WWC)のLoic Fauchon議長による演説がなされ、最後にマレーシア農業食料安全省のMohamad大臣による開会のあいさつが行われ、ICID会議がスタートした。

  

Mohamad大臣)

4.第4回世界かんがいフォーラム(9月8日〜10日)

(7)   ウーマン・イン・ブレックファースト

杉浦委員、越山委員が出席した。

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(8)   全体会議(Plenary Session

Main-Themes及びSub-Themes 14に関する全体会議が行われ、杉浦委員、木村委員、乃田委員、久野委員、皆川委員が出席した。

  

(9)   技術会議(Technical Session

Sub-Themes 14に関する技術会議が行われ、渡邉委員長、長野委員、森員が参加した。

Sub-Themes 1における技術会議では、日本水土総合研究所による若手技術者派遣プログラムにより参加したNTC(株)東北支社の石本帆乃技師が「福島県の国営灌漑排水事業地区における灌漑管理システムの実態分析」と題して発表を行った。

     スーツを着た男性たち

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(10)  分科会(Side  Event

@ SE3:回復力のある持続可能で生産性の高い水田農業の推進 

Accelerating More Resilient, Sustainable and Productive paddy farming

INWEPF及びICID日本国内員会が主催し、農村振興局設計課海外土地改良技術室の藤本課長補佐の司会で、農林水産省農村振興局の青山次長が開会の挨拶を行った。

その後、INWEPFタイ、INWEPFマレーシア、INWEPF韓国による発表に引き続き、松野委員が「第19INWEF運営会議におけるWG3の活動報告」について、農林水産省農村振興局設計課海外土地改良技術室の中山慶祐係長が本年11月に滋賀県大津市で開催される「第20INWEPFシンポジウム・運営会議の紹介」についてそれぞれ発表した。

最後に清水委員がモデレーターを務め、渡邉委員長、マルコICID会長の他、INWEPFタイ、INWEPF韓国の参加により、本分科会テーマに関するパネルディスカッションが行われた。

会議室に集まる人々

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(藤本補佐)        (青山次長)        (中山係長)

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(松野委員)       渡邉委員長(パネリスト)、清水委員(モデレーター)

A SE5:地域農業における水管理への女性参画

Women Engagement in Local Agricultural Water Management

ICID日本国内委員会とTF-WEWMが共催し、農村振興局設計課海外土地改良技術室の藤本補佐の司会で行われた。冒頭、農林水産省農村振興局の青山次長の挨拶の後、那須野ヶ原土地改良区連合の星野恵美子専務理事が「日本の農業用水管理における女性参画の現状と取組」(Current Status and Measures for Women Engagement in Local Agriculture Water Management in Japan)について発表。

また、森委員が「中東及びアフリカにおける水利用者グループのジェンダーに改善プロジェクト」(Projects for enhancement of water users group with attention to gender perspective in Middle East/Africa)と題した発表を行ったのち、越山委員の司会により、森委員、TF-WENNarges女史、MANCIDYuslina女史、KCIDKyung-Sook女史による「農業用水管理における女性参画の役割と課題」についてのパネルディスカッションが行われた。

テレビを見る人

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(星野専務理事)                 (森委員)

会議室にいる人たち

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。    部屋に集まっている人たち

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(森委員)               (参加者集合写真)

B SE9:気候変動への適応と緩和を促進するための灌漑と排水の実践の推進

(Advancing Irrigation and Drainage Practices to Facilitate Climate Change Adaptation and Mitigation)

ICID日本国内委員・JICAFAOが共同で開催し、JICAの平林氏の司会で行われた。

冒頭、農林水産省農村振興局の青山次長の挨拶に引き続き、JICA副理事長の山口氏及びFAOの上級担当官のMaher氏が本テーマに対する国際協力事例について発表を行った。その後、Maher氏がモデレーターを務め、皆川委員、JICAの島田氏(オンラン参加)のほか、タイ及び台湾の国内委員の参加によるパネルディスカッションが行われた。

    

(青山次長)            (平林氏)

 

C SE13:最新のリモートセンシング技術による水田水利用の最適化

Optimizing Water use in Paddy Irrigation with Advanced Sensing Technologies

アジア地域作業部会のサイドイベントとして渡邉委員長が議長を務め、中国、南アフリカ、台湾、インド、オーストラリア、イギリス、日本、FAOIWMIADBからの代表が参加した。タイ国内委員から2名が新たにWGに参加することが、本人参加のもと承認された。日本から木村委員がリモートセンシング、IoTAI技術を活用したデータ駆動型水田灌漑と米の品質向上を目指したプレゼンテーションを実施した。その他、プレゼンテーションとして、タイから正確な灌漑水管理を目指した衛生ベースのIrriSATの適用、タジギスタンから小規模農地における最新灌漑技術の導入が施設栽培の生産性に与える影響などが行われた。

 

(渡邉委員長・木村委員)          (木村委員)

D SE15:第1回世界灌漑施設遺産会議(The 1st World Heritage Structures Conference

農村振興局海外土地改良技術室の藤本課長補佐が「日本の世界灌漑施設遺産の保全と活用」について発表を行った。マルコICID会長、マレーシア国内員会、中国国内員会により、各国の世界灌漑施設遺産に関する発表がなされた。

天井, 屋内, 会議室, 部屋 が含まれている画像

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(藤本補佐)             (マルコ会長)

E その他の分科会

分科会2(FAO主催:最新の収穫量向上と節水のための作物の必要水分量の推定)に久野委員、分科会4(IWMI主催:気候変動に対する水管理の強靭化)に加藤委員、分科会3(FAO主催:農業における水不足のグローバルフレームワーク(WASAG)に木村委員、分科会7(MSSRF他主催:農業の技術革新とデジタル化)に乃田委員、分科会8(ICARDA主催:自然エネへの移行と精密農業を通した持続可能な水管理の未来形)に清水委員、分科会11(SACID/FAO/IWMI主催:将来の強靭化に向けたスマート灌漑)に向井委員、分科会12(FAO主催:灌漑の未来・水利用効率の監視)に乃田委員が出席。乃田委員が発表を行い、水田農業の多面的機能を紹介し、農業用水によって生み出される価値を水利用効率だけでは表現しきれない、と説明した。

F ポスターセッション

WIFの期間中、日本水土総合研究所による若手技術者派遣プログラムにより参加した近畿大学大学院農学研究科博士課程1年の岡山貴史氏が「中山間地域における柿栽培のためのスマート灌漑システムの導入」と題したポスターを展示会場に掲載し、広く参加者に対して必要に応じて説明を行った。

テキスト

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(11)  第4回世界かんがいフォーラム閉会式(ステートメントの発表)

マルコ会長のあいさつに引き続き、Sub-Theme1〜4での会議結果について、各担当の副会長による説明が行われたのち、名誉会長のBart氏より第4回かんがいフォーラムのステートメントが発表された(下記参照)。

また、次回開催地であるフランスのマルセイユで第25ICID会議&第77ICID国際執行理事会の開催について紹介が行われた。テーマは、ICID会議のテーマ:「気候変動の課題に直面した水と農業の回復力」(Water and agricultural resilience in the face of climate challenge

最後に、ホスト国であるICIDマレーシア国内員会のユスリナ委員長が閉会の辞を述べた。

   

ICIDフランス・マルセイユ開催紹介)    (ユスリナ委員長)

<ステートメント要約>

4回世界灌漑フォーラムは、「灌漑は斜陽産業か?」を主要テーマとして、ICIDMANCIDと共同で開催し、FAOADBWBIWMI、その他の戦略的パートナーが参加した。フォーラムには、39か国から750名を超える国内外の参加者が参加した。

WIF4の焦点は、経済的・社会的に実現可能な開発、運営、維持管理、そして近代化を通じて、持続可能な世界の食料安全保障、貧困削減、そして環境保護を達成する上での灌漑、排水、洪水管理の役割である。したがって、私たちは以下のことを認識する。

  世界は人口増加と急速な都市化、干ばつや洪水の増加といった気候変動の影響、そして環境悪化に直面していることを認識し、第4回世界灌漑フォーラム及び第76IEC会議(20259月、マレーシア・クアラルンプール)で議論した。

  利用可能な水資源の持続可能な開発と管理は、食料安全保障の維持、貧困削減、そして農村開発にとって優先課題であることを再確認した。

この状況を踏まえ、リモートセンシング、人工知能、デジタル技術といった新たな支援技術、実践、そして可能性への適応の余地が広く存在することを認識し、WIF4の参加者は、以下の点について見解を共有している。

   フォーラムの主要テーマである「灌漑は斜陽産業か?」の問いに対し、灌漑は成長産業であるという共通認識がある。

   一般的な問題は、様々な灌漑・排水計画が、インフラの老朽化、投資の減少、都市化による土地と水の競合、気候変動の影響、そして経済的・環境的圧力に直面していることである。

   世界における気候変動に起因するいくつかの変化は、もはや後戻りできないという明白な証拠がある。したがって、私たちは新たな常態に適応しなければならない。

持続可能な開発と管理のためには、水不足、灌漑開発、都市化が進行し、持続可能な水管理に大きな影響を与える可能性のある河川流域において、沿岸国間の協力を強化することが急務。   例えば、アラル海流域、チャド流域、乾燥・半乾燥地域、人口密度の高い河川流域、沿岸・デルタ地帯などが挙げられる。

国際協力は、新技術の導入、知識の共有と移転、そして制度の近代化においてますます重要。

高度なマッピング、自動制御、デジタル技術、リモートセンシング、システムモデリングといった最新技術を適用することで、これらの技術は灌漑・排水制度の近代化を支援することができる。

若いリーダーに変革を推進する力を与え、農家を設計に参画させ、地域の水文化を継承し、ジェンダーの不平等に対処することで、農業用水管理におけるより包摂的で持続可能な未来を実現することができる。

参加型農業において、人々と女性に焦点を当てる包摂的な開発は、今後の灌漑・排水プロジェクトの成功率を高める。

女性のエンパワーメントは道徳的な選択ではなく、水安全保障、世帯の生活向上、地域社会のレジリエンス(回復力)の促進、そして生態系の繁栄にとって、これは極めて重要な戦略である。障壁を取り除き、ギャップを埋め、あらゆるレベルの意思決定において女性が積極的に関与できる環境を整える時が来ている。

民間セクターは、灌漑・排水関連製品およびプロジェクトの提供において、イノベーションと成長の原動力として認識されている。

参加者一同、この先見性に富み、意義深く、成功を収めたイベントの準備、開催、そして支援に尽力いただいた主催者とドナーの皆様に感謝申し上げる。

 

5.75回国際執行理事会(IEC)(910日〜13日)

(12)  プレナリー会合(910日)

マルコ会長のあいさつに引き続き、PCTAの議長、PCSOの議長からそれぞれの課題について説明がなされ、その後、2025年の各賞の授賞式が行われた。日本は世界かんがい施設遺産について2施設が認定され受賞された。各賞の受賞は次のとおり。

@ 世界かんがい施設遺産

日本については、「竹田のかんがい用水群(大分県)」及び「湯ノ口ため池・井出の施設(熊本県)」が認定され、認定証と盾が贈呈された。授賞式には竹田のかんがい用水群の代表として土居昌弘竹田市長、佐藤慶一荻柏原土地改良区理事長、竹田市の吉野課長及び高橋課長補佐が出席した。

その他、中国4施設、インド4施設、イタリア4施設,南アフリカ4施設,タイ1施設,トルコ1施設,ウズベキスタン2施設が認定され、全体で23施設が認定された。その結果、日本の認定数は56施設となった。

湯ノ口ため池・井出の施設(渡邉委員長、青山次長(代理))  (竹田のかんがい用水群(土居市長、佐藤理事長)

          

A Wat Save Awards
i) Innovative Water Management AwardDr. SEBINASA DZIKITI (South Africa)

    “Decision support system for water use of irrigated tree crops”

ii)Technology AwardProf. Hong Li (China)

“Intelligent sprinkler irrigation equipment and systems assist water-saving”

B Young Professional AwardMr. Khaldoon Ibrahaim Abbas (Iraq)

    “Soil and crop service machine and subsurface drip irrigation pipe installation” 

C The Best Paper Award in the ICID JournalJose L. Chaver, Edson Costa-Filho and

                                            Huihui Zhang

Assessing multi-sensor hourly maize evapotranspiration estimation using a one source surface energy balance approach”

 

(13)  常任委員会・作業部会・タスクフォース(911日)

@ 常任委員会

組織員会(PCSO)に渡邉委員長、財務委員会(PFC)に奥田副委員長がそれぞれ出席し、ICIDの運営に係る議論に参画した。

A 気候変動部会(WG-CLIMATE

長野委員が書記として司会を務めるとともに、皆川委員、杉浦委員が出席。

会議室にいる人たち

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。      部屋の中で椅子に集う人々

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。

(長野委員)

 

B かんがい用水の管理と開発 WG-IWMD

加藤委員が「 Adaptation and Mitigation for Climate Change in Irrigation sector Case studies introduction」と題した発表を行った。

また、向井委員が「Sustainable Water Storage in Agricultural Dams Using New Technologies −Automated Surveying Technologies for Low-Cost and Sustainable Sediment Management −」と題した発表を行った。

屋内, 天井, 人, 立つ が含まれている画像

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。   会議室でパソコンをする男性

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(加藤委員)               (向井委員)

C アジア地域作業部会 ASRWG

渡邉委員長が議長を務めて開催された。本部会では、農林水産省農村振興局設計課海外土地改良技術室の野室長が「今後の海外農業農村開発に関する展開方向」について発表を行い、国際的な水議論等への対応・FAO,MRC,IWMI等の国際機関との連携、気候変動等の地球規模課題に対応した農業農村開発の推進等に必要な施策を進めていく旨発信した。奥田委員、木村委員他が出席した。

また、渡邉委員長が「Challenges and RD in Water Management for Food Security –International and National Perspectives −」と題した講演を行った。

会議室に集まる人々

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。   テレビを見る人

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(渡邊委員長)              (野室長)

D その他、議長やコーディネーター等としての対応

²  歴史部会(WG-HIST):松野委員が議長として対応。越山委員、杉浦委員の参加が承認された。

部屋の中に立っている人たち

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。    天井, 屋内, テーブル, 立つ が含まれている画像

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。

²  制度的及び近代化の組織的側面灌漑の開発と管理バリューエンジニアリングによるサポート部会(WG-IOMVE):森委員が議長として対応。久野委員が参画。

天井, 屋内, テーブル, 立つ が含まれている画像

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。スーツを着た男性

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。  








(森委員)             (久野委員)

 

²  農地排水部会(WG-LDRG):越山委員が副議長として対応。吉川委員が参画。

椅子に座っている人たち

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。テーブルの周りに集まっている人々

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。人, 天井, 屋内, 立つ が含まれている画像

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。

(吉川委員)     (越山委員(副議長))   (参加者集合写真)

 

²  社会経済変革期における灌漑排水部会(WG-IDSST):清水委員が書記として対応。

²  女性活躍タスクフォース(TF-WEWM):杉浦委員がパネリストとして参加。

会議室に座る男性

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。   結婚式の新郎新婦

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(杉浦委員)

(14)  技術活動委員会(PCTA)−各WGからの結果報告−(9月12日)

WG及びタスクフォースの結果について担当議長等を務める清水委員より「 社会経済変革期における灌漑排水部会(WG-IDSST)」について、渡邉委員長より「多言語技術辞書タスクフォース(TF-MTD)」について、森委員より「 制度的及び近代化の組織的側面灌漑の開発と管理バリューエンジニアリングによるサポート部会(WG-IOMVE)」について、それぞれ報告が行われた。

              
(清水委員)     
      (渡邉委員長)          (森委員)

(15)  国際執行理事会本会議

@ 副会長選挙 

定員3名に対し、3名が立候補し、投票数の多い順にMs. Cristina Clemente Martínez (スペイン)、Mr. Sanjeeb Baral(ネパール)、Engr. (Mrs.) Esther Oyeronke Oluniyi(ナイジェリア)が当選した。

 屋内, 座る, 民衆, テーブル が含まれている画像

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A  今後のICID関係会議の予定

²  77IEC・第26回総会(フランス・マルセイユ、2026101218日)

²  78IEC・第5回世界かんがいフォーラム(中国・北京、2027年5月)

<以下未定>

79th IEC and 5th Regional Conference 2028

80th IEC and Congress 2029

Regional Conferences

12th Intl. Micro-Irrigation Conference? 2027年ロシア・カザン開催が提案された。

15th International Drainage Workshop

B 「中東地域作業部会Middle East Regional Working Group (MERWG)」の設立に関する議論及び「長期的・永続的性質の作業部会の議長・副議長・幹事の任期を3年に固定する」議論

・枠組みや目的、対象国・部会、適用時期等が不明確なため継続審議となった。

群衆の前に立っている

AI 生成コンテンツは誤りを含む可能性があります。<閉会時の記念写真>

 

 

 

 

 

 

 

 

(参考)<第4回WIFステーメント全文>

Recognizing the importance of sustainable agricultural water management and to bring it to the forefront, starting from 2013, ICID has been organizing the World Irrigation Forum. It aims to bring together the stakeholders under one roof, including policymakers, experts, researchers, academics, NGOs and farmers. It provides a platform for the irrigation and drainage community and interested development professionals to find solutions to problems plaguing agricultural water management, in rapidly changing demographics and dietary habits, under unsustainable water resources extraction, depletion of freshwater resources as a result of climate change, and extreme climatic events.

The Fourth World Irrigation Forum as its Main Theme: Is irrigation a sunset industry ? organized by ICID in cooperation with MANCID. External partners included FAO, ADB, WB, IWMI, and other strategic partners. Four sub-themes: Challenges of irrigation and drainage for food security in the changing World, Technology and modernization in the agricultural sector towards food security, Innovative policy, service delivery, and financing mechanisms to meet the challenges of the future, Nature-based solutions in agriculture to foster ecological resilience. In addition, there was a meeting of HLAG, 4 Workshops, 16 Side Events, and an Exhibition

In total more than 750 international and local participants from 39 countries, including representatives of 6 International Organizations attended the Forum based on the Forum's deliberations, the following statements were formulated and supported by the participants at the concluding session of the Forum

Focus of WIF4 was on the role of irrigation, drainage and flood management in achieving sustainable global food security, poverty alleviation and environmental protection, through economically and socially viable development, operation, maintenance and management, as well as modernization. We, therefore:

-recognize that the World is facing population growth and rapid urbanization, impacts of climate change, such as increasing droughts and floods, and environmental degradation the World Irrigation Forum and 76th IEC meeting September 2025, Kuala Lumpur Malaysia

reaffirm that sustainable development and management of the available water resources is a priority issue for maintaining food security and reducing poverty, as well as rural development

 Recognize that in light of this, there is a wide scope for adaptation to the new supporting technologies, practices and possibilities, such as remote sensing, artificial intelligence and digital technology 4thWorld Irrigation Forum and 76th IEC meeting September 2025, Kuala Lumpur Malaysia

Therefore, the participants of WIF4 share the view on the following:

 -although the main theme of the Forum was Is irrigation a sunset industry? there is a common understanding that irrigation is a sunrise industry

general problem is that various irrigation and drainage schemes are confronted with aging infrastructure, declining investment, land and water competition from urbanization, climate change impacts, and economic as well as environmental pressures

here fore, the participants of WIF4 share the view on the following:

 -although the main theme of the Forum was Is irrigation a sunset industry? there is a common understanding that irrigation is a sunrise industry

 -a general problem is that various irrigation and drainage schemes are confronted with aging infrastructure, declining investment, land and water competition from urbanization, climate change impacts, and economic as well as environmental pressures

-there is unequivocal evidence that there is no going back from some climate-induced changes in the World. Therefore, we must adapt to the new normal

for sustainable development and management there is an urgent need for increased cooperation of the riparian states in river basins where water scarcity, irrigation development, or urbanization are taking place and may have a strong impact on sustainable water management, like the Aral Sea Basin, the Chad Basin, the river basins in arid and semi-arid regions and densely populated river valleys, coastal and deltaic regions

international cooperation is becoming more important for introduction of new technologies, knowledge sharing and transfer, and for modernization of schemes

by applying modern technologies, such as advanced mapping, automatic control, digital technology, remote sensing and system modelling, these technologies can support the modernization of irrigation and drainage schemes

by empowering young leaders to drive transformation, engaging farmers in design, embracing local water cultures, and addressing gender inequities, a more inclusive and sustainable future for agricultural water management can be achieved

-incorporating a focus on people and women in participatory inclusive development will enhance the success of irrigation and drainage projects going forward

empowering women is not a moral choice, but a vital strategy for water security, improvement of household livelihoods, fostering community resilience, and flourishing ecosystems. It is time to remove barriers, fill the gaps, and to create the conditions for women's active engagement at all levels of decision-making

private sector is recognized as engine of innovation and growth in the delivery of irrigation and drainage products and projects

The participants wish to thank the organizers and the donors for preparing, hosting and supporting this visionary, pertinent and successful event