会長挨拶

会長

2022年2月に起こったロシアによるウクライナ侵略等を機に食料安全保障を巡る議論が活発化しています。食料の安定的な供給について、農政の憲法とも呼ばれる食料・農業・農村基本法では、「世界の食料の需要及び貿易が不安定な要素を有していることにかんがみ、国内の農業生産の増大を図ることを基本とし、これと輸入及び備蓄とを適切に組み合わせて行わなければならない」としていますが、まさにこの「不安定な要素」が、私たちの周りで重なるように起き、今の議論に繋がっていると感じています。

世界の人口が概ね80億人に達し、その10人に1人が飢えに苦しんでいると国連機関は推計しています。また、新型コロナウイルス感染症の発生によりサプライチェーンの混乱も起こりました。更に、気候変動によって、異常気象や降水量の変化が発生し、農産物の品質や量に影響を与えています。
 このような中で、我が国の食料安全保障を確保するためには、輸入にかなり頼らざるを得ないのが現状です。何故なら、我が国の食料需要を鑑みれば、国内生産だけでは満たすことのできない品目が多くあるからです。

そこで、我が国の輸入を不安定化させないためには、様々な外交的な努力とともに、世界的な食料需給の安定化、特に我が国への食料供給が期待できるような途上国における農業生産の拡大に対する貢献、技術協力も重要です。つまり、世界の食料需給の安定化への貢献が我が国の食料安全保障の一翼を担うわけです。

このような観点で、国際かんがい排水委員会(ICID)における我が国の活動を見つめ直せば、農業生産における重要な要素の一つである農業用水を対象とする「かんがいと排水」という技術分野において、世界的な食料需給の安定化に資するとともに、我が国の食料安全保障に寄与するような貢献を、官民学が一体となって取り組んでいると言えます。

そして、ICID協会はそのような活動を支援するため、会員の皆様への情報提供をはじめ活発な運営に今後とも務めて参りたいと考えています。どうぞよろしくお願いいたします。
 当協会の活動の趣旨にご賛同いただける皆様の参画をお待ちしております。

日本ICID協会

会長 奥田 透






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